×

ニュース

原医研、共同研究拠点に 国が認定 きょうから 全国の機関が活用

■記者 藤村潤平

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)が1日から、国の認定する共同利用・共同研究拠点となる。放射線影響や被災者治療の分野で全国から公募した60の共同研究が始まるほか、蓄積した被爆資料を広く活用するため「被ばく資料調査解析部」を新設する。

 共同利用・共同研究拠点は、特定分野で研究をリードする国公私立大付属の研究機関のうち、他大学の研究者からも利用ニーズが高い73施設を、国が初めて認定した。原医研は、原子力エネルギーの普及や医療・産業での放射線利用の増加などを背景に、研究者から認定の要望が相次いでいた。

 共同研究の公募には、東京大や国立がんセンター(東京)など計34大学・機関が手を挙げた。原医研スタッフとともに、低線量放射線の影響に関する研究▽骨髄移植を用いた造血幹細胞の遺伝子機能解析▽DNA修復能力と個人の発がん感受性に関する研究―などの課題に取り組む。

 合わせて組織も改編する。新設する「被ばく資料調査解析部」は、被爆者の病理標本などを最新機器でゲノム(全遺伝子情報)解析し、これまで分からなかった放射線の影響を探る。成果は共同研究に活用してもらう。

 神谷研二所長は「原医研が保管する貴重な資料や機器の共同利用や共同研究を積極的に働き掛けることで、放射線被害や治療開発の国際拠点の地位を固め、世界に貢献したい」と話している。

原爆放射線医科学研究所(原医研)
 1961年に「原爆放射能医学研究所」として設立。放射線障害のメカニズム解明や、再生医療やゲノム科学を駆使した治療開発を担う。被爆者の病理標本やカルテなど医学資料約3万点、米国からの返還資料約1万1千点などを保管する。所属する研究者は1日現在で47人。

(2010年4月1日朝刊掲載)

関連記事
「黒い雨」領域など国内外の研究報告 原医研(10年3月 4日)
旧セミパラ 初の核実験から60年 広島大原医研 星正治教授に聞く(09年8月31日)
がん細胞 被爆者のゲノム解析着手へ 来春にも原医研(09年6月29日)

年別アーカイブ