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遺品・資料の寄贈減 原爆資料館 昨年度57件どまり

■記者 増田咲子

 原爆資料館(広島市中区)に寄せられる原爆犠牲者の遺品や被爆関連資料が減少している。2009年度の寄贈は57件で、最近のピークだった2004年度の約4割の水準。被爆者や遺族が高齢化する中、原爆被害を伝える資料が散逸する懸念もあるとして、資料館は引き続き寄贈や相談を呼び掛けている。

 年度別の寄贈件数は、記録が残る1996年度以降は増加を続け、被爆60年に向けて資料館が広く呼び掛けた2004年度に137件とピークに達した。だが、その後は減少傾向にあり、資料館は「被爆者が亡くなったために資料の価値が分からなくなったケースもあるだろう」とみる。

 これまでに寄せられた資料は約2万点に上る。被爆当日に身に着けていた衣類、自宅の焼け跡から持ち帰った台所用品、被爆瓦などさまざまだ。遺骨代わりに大切にしていた身の回り品を「保管して」と遺族が資料館に託す場合もある。

 資料館は、寄贈を受けた資料を新着資料展で紹介するほか、データベース化して資料館ホームページ上で公開。館外への一時貸し出しも含め、原爆被害を広く伝えるために活用している。

 前田耕一郎館長は「資料にまつわる物語も記録することで、原爆の悲惨な記憶をリアルに伝えることができる。寄贈者の思いも受け止め、後世に残していきたい」と話している。

(2010年4月6日朝刊掲載)

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