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「黒い雨」地域被爆者 放射線の影響がより強い可能性 原医研調査

■記者 明知隼二

 原爆投下直後、爆心地より北西の「黒い雨」降雨地域にいた被爆者は、爆心地から等距離の別の地域にいた人に比べ、放射線の影響をより強く受けた可能性があることが、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の冨田哲治助教らの調査で分かった。15日、同大霞キャンパス(広島市南区)で研究途中経過を報告した。

 冨田助教らは原医研の被爆者データベースのうち、1980年時点で生存し、被爆地点が詳しく分かる3万1055人を97年末まで追跡。爆心地から半径約2キロの範囲で、被爆位置と死亡時期の関係を、性別や被爆時年齢を加味して解析した。

 その結果、黒い雨が降った北西方面にいた場合、爆心地から等距離の他の地域で被爆した場合に比べ、死亡率がわずかに高い傾向がみられたという。

 原医研側は「研究初期の段階であり、具体的な数値はまだ公表できない」とし、今後、データの追跡範囲を広げるなどして精度を高めていく方針。原医研の大滝慈教授は「放射線の影響をみるには被爆距離だけでなく、黒い雨などの要因を真剣に考慮する必要がある」としている。

(2010年4月16日朝刊掲載)

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