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「核兵器使用は人類への犯罪」 元首相ら5人が声明 OBサミット

■記者 増田咲子

 広島市内で18日に始まるインターアクション・カウンシル(OBサミット)を前に、村山富市、福田康夫両元首相、秋葉忠利市長らが17日、核兵器廃絶を願う声明を発表した。

 声明は、米ロの新核軍縮条約調印などを歓迎する一方、「核兵器の破壊力と長く続く苦しみを実体験した日本人は、誰よりも危惧(きぐ)している」として核拡散や核テロへの懸念を表明。核兵器使用は人類に対する犯罪であると確定するよう国連に求めるとともに、内外の政府や人々に対し「人類の未来が危機にひんしているとの憂慮の念を共有し、あらゆる行動を起こす」よう呼び掛けている。

 声明は「核なき世界への日本人の願望」と題し、河野洋平前衆院議長、宮崎勇元経済企画庁長官も含めた5人の連名。


                                                    2010年4月

               核なき世界への日本人の願望

広島が世界最初の核攻撃を経験し、長崎を世界最後の被爆地としなければならないと決意してきたわれわれ日本人は、核兵器に対して特別の感情と恐怖を抱いている。大多数の国民は、戦後一貫して核兵器の廃絶と世界平和を訴え続けてきた。したがってわれわれは、核兵器なき世界を目指す国際政治の最近の高まりを心から歓迎する。

とりわけ、世界の核兵器の90%を保有する米国とロシアによる、戦略核兵器削減条約I(STARTI)の後継となる、核弾頭の大幅削減を定めた新たな核軍縮条約の調印は、核廃絶に向けての有意義な第一歩として高く評価したい。昨年4月、米国のオバマ大統領がプラハにおいて、核兵器を使用した唯一の国の大統領として、初めて「核兵器なき世界」へ向けて確固とした決意を表明されたときも、日本人は高く評価し、感動した。同大統領が核兵器廃絶に向けて、強力なリーダーシップを発揮され続けることを期待する。

核軍縮に向かう歓迎すべき動きの中、核兵器保有国が増え続け、核兵器テロの可能性も現実感が増している。核兵器の巨大な破壊力と放射能障害がもたらす長く続く苦しみを実体験した日本人は、この現実を誰よりも危惧している。今月ワシントンにおける核安全保障サミットにおいて、47カ国が核物質の国際管理に向けて合意したことを高く評価するとともに、核不拡散問題への一層の取り組み強化を願っている。また、大国の核弾頭が削減されたとはいえ、あの広島と長崎が体験した惨禍の数万倍といわれる破壊力を持つ核兵器が依然として残されている。我々はこの事実を指摘せざるをえない。

地球と人類をこの核兵器による惨禍から守るために、米国の4賢人に続き、英、独、伊、オーストラリア、スウェーデン、カナダなどでも、核兵器なき世界を訴えて政界の重鎮たちが立ち上がった。我々は、彼らに心から敬意と賛意を表明し、日本でも核兵器ゼロへのうねりを新たに高めるべく尽くしたい。それこそが、数十万人という核兵器の犠牲者たちに対する何よりもの弔いであると思うからである。また犠牲者たちは、核兵器の使用が人類に対する犯罪であることを国連で確定し、国際社会がその犯罪の撲滅を目指して、一丸となって前進することを願っている、と確信する。

われわれ5人は、核兵器の拡散によって、人類の未来がかつてない危機に瀕しているとの憂慮の念を世界の有識者と共有し、手遅れにならないうちに、内外の政府と人々に必要なあらゆる行動を起こすよう呼びかける。

          元総理大臣 村山富市
          元総理大臣 福田康夫
          元衆議院議長 河野洋平
          元経済企画庁長官 宮崎 勇
          広島市長  秋葉忠利



(2010年4月18日朝刊掲載)

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