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核兵器廃絶へ28の勧告 OBサミット閉幕 広島

■記者 新田葉子

 20カ国の元首脳や専門家たち35人が参加した「インターアクション・カウンシル(OBサミット)」の第28回年次総会は20日、広島市南区のホテルで最終会合を開き、核兵器廃絶に向けた28項目の勧告を含む共同声明を採択、3日間の日程を終えて閉幕した。

 共同声明は「核兵器廃絶へのこれまでにない強い決意」「私たちのように二度と誰もが傷つくことのないようにとの被爆者の願いを確実にする」などの文言を織り込んだ。

 具体的には「核兵器ゼロ」に向けた28項目の勧告として、核兵器保有国に先制不使用や警戒態勢解除を求めた。国際社会に核兵器禁止条約の実現や核燃料の国際管理、核抑止力への依存思考からの脱却を呼び掛けた。

 勧告は同時に、世界の指導者に広島訪問を呼び掛け、平和市長会議の取り組みを支持したものの、核兵器廃絶の具体的な期限は明示しなかった。この点について閉幕後に記者会見したクレティエン共同議長(カナダ元首相)は「できるだけ早期に核兵器ゼロを実現するため、あえて期限は設定しなかった」と説明した。

 会見に同席した福田康夫元首相は「目標の実現に向けた働き掛けが参加者の責任」と述べた。

 共同声明はこのほか世界情勢について、中東の安定やアフガニスタンでの戦争終結など13項目の提言を盛り込んだ。19日に採択した「広島宣言」とともに各国首脳や国連などに送る。5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議にも提出する。


<解説>核兵器禁止へ強い期待 被爆者らの意向くむ


■記者 金崎由美

 被爆地広島でのOBサミット総会が採択した共同声明は、19日発表した「広島宣言」とともに、核兵器廃絶への道筋を包括的に、かつ踏み込んで提言している。

 例えば共同声明は、核兵器禁止条約を「必要」とし、実現へ強い期待を表明した。核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の昨年の最終報告よりも踏み込んだ表現は、サミットに集った元首脳たちが被爆者や市民社会の意向をくんだ結果といえる。

 共同声明はさらに、核兵器の依存度を減らすよう提案し、核抑止力への依存思考からの脱却も促している。国家指導者たちの広島訪問も求めた。

 19日に採択した「広島宣言」でも、国連が核兵器使用を「人類に対する犯罪」と宣言するよう促した。米国の「核の傘」に頼る日本、しかも被爆地での開催を強く意識した内容といえるだろう。

 軍縮専門家として今回の論議に加わった英国のレベッカ・ジョンソンさんも「参加者が原爆資料館を見学し、被爆体験を聞いたことが議論に相当の影響を与えた」と明かした。

 今回参加した元首脳の中には、現役政治家として活躍する人もいる。軍事・平和関連の政策決定過程でいっそうの指導力を発揮するよう、その決意と手腕に期待したい。


OBサミット「NPT後押し」 広島市長


■記者 増田咲子

 広島市の秋葉忠利市長は20日、市役所で記者会見し、自らも論議に加わったOBサミットについて「被爆地広島から核兵器廃絶のメッセージを発信し、核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功に向け大きな後押しになる」と述べた。

 市長は、前日の広島宣言やこの日の共同声明の内容に触れ「できるだけ早期に核兵器のない世界を実現してほしいという被爆者、広島市民の願いをしっかり受け止めてくれた」と話した。

(2010年4月21日朝刊掲載)

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