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平和市長会議2000都市突破 核廃絶の願い 草の根で拡大 「市民外交」結実も 米エバンストン市

■記者 吉原圭介、桑島美帆

 平和市長会議の加盟都市が急増し、2000の大台を突破した。その背景には、各地の平和団体や市民による草の根の取り組みがある。米国では先月末、大学で「広島・長崎講座」を受講し、昨年訪れた広島で被爆者と出会った米国人学生が、新たな加盟都市を増やした。そこには米国在住の被爆二世も深くかかわっていた。「市民外交」ともいえるその一例を紹介する。

 1月28日午前9時。平和市長会議の事務局がある広島平和文化センター(広島市中区)では職員たちが、間もなく記者発表する加盟都市数2028の確認作業に追われていた。週末を挟んで届いたメールなどの最終チェックだ。

 その中に、米中部シカゴ市にあるデュポール大の宮本ゆき准教授(40)からのファクスがあった。シカゴに隣接するエバンストン市のロレーヌ・モートン市長が署名した加盟申請書だ。

 宮本さんは広島市中区出身の被爆二世。十数年前に留学のため渡米し、原爆投下を正当化する学生が多いことを危惧(きぐ)していた。宗教学が専門で、2003年からデュポール大で原爆投下について考える講座を持つ。広島市が提唱した「広島・長崎講座」の一環である。

 05年には「被爆者と接することでより理解が深まる」と、学生を引率して広島を訪問。昨年12月には二度目を実現させた。

 エバンストン市が加盟するきっかけをつくったのは、宮本さんの授業の受講生で、二度目の広島訪問に参加したパトリック・コフィーさん(33)。

 湾岸戦争などに従軍した退役軍人で、広島で被爆者の話を聞いた。「あれだけの目に遭ってもすべてを受け入れ、世界平和を訴える姿に接して突き動かされた。自分にできることをしたいと思うようになった」

 帰国後すぐに同じ講座の仲間と署名を集め、広島で拾った被爆瓦を手に先月、シカゴ市長を訪問。バーリントン市、リンカーン市など、周辺の市長へ手紙を書いた。

 要請に応じて加盟申請書にサインしたモートン市長は、6月の全米市長会議で、コフィーさんたちの活動を発表してはどうか、と提案。窓口も紹介してくれた。  コフィーさんは「いずれは、核兵器使用の決定権を持つ大統領にも平和市長会議の理念を伝えたい」と力を込める。

 「わずかな広島滞在でここまで考え方が変わるとは。選挙権を持つ米国の学生が、政治家に核兵器廃絶を求める力は大きい」と宮本さん。平和市長会議を広げようとする学生たちの行動力に手応えを感じている。

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