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昨年度原爆症認定 病気7種類だけ 司法判断の「40」と隔たり

■記者 岡田浩平

 昨年度、国に原爆症と認定された2814件は、基準で「積極認定」の対象に定めるがんなど七つの病気にとどまることが分かった。約40の病気を認めた集団訴訟の一連の司法判断との差が際だつ。却下件数は2189件に達した。

 厚生労働省によると、認定された病気別の内訳は、がんが2534件で9割を占める。白血病153件、心筋梗塞(こうそく)47件と続く。

 国は集団訴訟での連敗を受け、2008年4月に認定基準を緩和。被爆地点などの条件に合えば五つの病気を積極認定し始め、2009年6月には甲状腺機能低下症と肝機能障害(慢性肝炎、肝硬変)を加えた。積極認定の条件から外れるがんなどは審査会での総合判断で認定しているが、病気の種類は増えていない。

 一方、各地裁判決は原告の被爆状況や健康状態を踏まえた上で国が認定しない脳梗塞後遺症や糖尿病、骨折などを原爆症と認めた。地裁で勝った原告は昨年8月に国と原告側が交わした訴訟解決に向けた確認書に基づき、審査会に諮らずに認定されている。厚労省健康局総務課は「司法判断は参考にしている。ただ確認書は極めて特別な措置だ」と強調する。

 半面、却下は昨年9月から急増し今年3月29日にあった審査で441件に上った。日本被団協など原告側は、判決内容がどれだけ反映されているか精査するため、厚労省側に審査結果の情報公開を要請。長妻昭厚労相は応じる考えを示したが、公開する情報の範囲などで調整が難航している。

 被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は「結果を見る限り司法判断との差は依然大きい。現行基準で認められる事例はもっとあるはずだ」と国側に強く改善を求める構えだ。

(2010年4月27日朝刊掲載)

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