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加盟2028都市の分布 危機感反映 欧州が最多 アジアで浸透 課題

 平和市長会議に加盟する2028都市を世界地図に落とすと、ヨーロッパに多く、アジアに少ない。

 国別で最も多いのはドイツの308都市。ベルギーの298都市が続く。ヨーロッパが多いことについて広島平和文化センターの薬師寺保行市長会議担当課長は「冷戦が終わってもドイツなどには核兵器が配備されているため危機感が強いことや、中心となって呼び掛けをする団体があることが大きい」と分析する。国や自治体の数が多いのも理由の一つだ。

 核超大国の米国は4位で116と意外に多い。人口3万人以上の市1139が加盟する全米市長会議の一割にあたる。

 アフリカ全体では106都市が参加しており、ウガンダが53と半数を占める。このうちワキソ市では市長が交代しても継続性を保つため、地域社会団体が他市への参加呼び掛けや公開討論会などの企画権限を与えられている。平和市長会議について「広島の事務局に各大陸の担当を置き、大陸ごとに調整のための事務局をつくっては」などと提言する。

 一方、隣の韓国は広島市と姉妹都市を結ぶ大邱と済州の2市だけ。中国は首都北京が入っているものの7市だ。薬師寺課長は「平和市長会議は多国間のネットワークなので文書は英語。英語が苦手な地域では広がりにくいという問題がある。引き続き呼び掛けるが、社会主義など国の体制も影響している」とみている。

参考
平和市長会議の加盟都市についての詳細は、平和市長会議のウェブサイトで「加盟都市分布図/加盟都市数」を参照ください。

平和市長会議の加盟都市から届いた声


上記の記事に合わせて実施したアンケートの回答を紹介します。
質問は下記6項目です。


1. 2008年1月に平和市長会議の加盟都市が2000都市を突破します。活動の広がりの背景には何があると思いますか。

2. 貴都市は、何年に平和市長会議に加盟しましたか。また、加盟した理由は何ですか。

3. 貴国で平和市長会議の加盟都市が拡大した理由は何だと思いますか。

4. 市役所内に、平和市長会議の窓口や担当者を置いていますか。また、具体的にはどのような活動を行っていますか。

5. 「2020ビジョンキャンペーン」に向けて、貴市で予定している取り組みを教えて下さい。

6. 2008年9月に広島では主要国(G8)の下院議長サミット(議長サミット)が開かれます。平和市長会議として取り組むべきアクションがあれば、ご提案下さい。

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<ドイツ・ハノーバー市>
ベルンド・グリンペ

1. 原爆投下により、広島と長崎の街が破壊されて60年以上経った今も、都市は核兵器の脅威に対して不安を感じています。これ以上都市は核攻撃の対象になるべきではありません。

2. 1983年、ハノーバーは広島市と姉妹都市提携に合意し、「世界平和連帯都市市長会議」(現「平和市長会議」)に加盟しました。

3. ドイツの都市は第二次世界大戦で大きな被害を受け、戦争や爆撃による破壊が都市に何をもたらすのか、ということをよく知っています。このため、ハノーバー市長は、他の都市の市長にも平和市長会議に参加するよう呼びかけました。

4. 広島市の姉妹都市として、ハノーバーは平和市長会議をサポートするべきだと思っています。ハノーバー市長は、平和市長会議の副会長の1人でもあり、市長室の秘書の1人が、市長会議に関する業務を担当しています。

5. 今年は、広島市との姉妹都市提携25周年に当たります。11月にベルリンで、ドイツ国内の平和市長会議の加盟都市が集まり会議を開催するため、今準備を進めています。この会議では、「2020ビジョンキャンペーン」が、主な議題の一つになる予定です。

6. 平和市長会議は、活動と目的について、議長サミットの参加者に伝えるよう努力すべきです。参加者が広島を訪れて原爆の被害を見れば、すべての核兵器を廃絶し、「2020ビジョン」を実現しようという訴えが、さらに支持を受けやすくなるでしょう。

<フランス・マラコフ市>
ミッシェル・シボ

1. 平和市長会議は、平和の取り組みを行う都市を増やすため、意欲的な計画を立てています。また、すでに加盟している都市に対しては、他都市に加盟を呼びかけるよう促しています。平和市長会議の熱心な取り組みはすでに実を結んでいます。フランスでは、勇気付けられる結果が出ています。

2. マラコフ市は、平和市長会議の当初からの加盟都市の一つです。マラコフの加盟は、日本人の新間美帆氏が設立した「広島・長崎研究所」がフランスにあったことにより可能となりました。1990年には荒木武元市長が、また別の機会に何度も平岡敬前市長が、さらに2005年に秋葉忠利市長がマラコフ市を訪問しています。

3. フランスの80の都市が、平和市長会議の取り組みに賛同し、ネットワークに入っています。我々としては、この数字は十分ではないまでも、かなりの数だと考えています。フランスは核保有国であり、核兵器について公の場で議論することは今でもタブー視されています。しかし、NPT(核拡散防止条約)第6条のおかげで、地方自治体が核兵器の問題に取り組むことができるのです。フランスがNPTに加盟したことで、フランスの核兵器禁止をフランスの法律の一部とする可能性が生まれました。

4. 5を参照

5. マラコフ市では、市役所の中に、平和市長会議を担当する特別部署を設けました。また、日本との関係を強化するため、「広島・長崎研究所」と緊密な協力関係を維持しています。

 市議会は全会一致でフランスに平和市長会議の独立支部である「フランス平和自治体協会」の設立に関わることを決議しました。「フランス平和自治体協会」は、マラコフ市役所の中に事務所を置き、スタッフがいます。マラコフ市の事務総長がすべての業務の責任を負い、文化やコミュニケーション担当の部署と連携しています。

 平和市長会議や「2020ビジョンキャンペーン」に関連したマラコフ市の活動は、国連やユネスコ、ユニセフの多くのプロジェクトと連動しています。特にユネスコが立案した「平和の文化」の8つの分野におけるプロジェクトを実施するため、当市が中心になって取り組んでいます。目標を達成するために、マラコフ市役所内の各部署が取り組んでおり、平和市長会議に加盟している他のフランスの都市にも、協力を要請しています。

 このほか、私たちは、フランス語の平和関連の本の出版を支援しています。 http://www.afcdrp.com/

 また、フランスは「都市を攻撃目標にするな(CANT)プロジェクト」にも参加しており、既に数都市が、市民の署名を集める活動を始めています。

 最近では、「ユネスコ共同学校」の教師達に対し、平和市長会議の活動を紹介しました。この会合は、ユネスコの国際ディレクターが進めています。

6. 現段階では、フランスが議長サミットに参加できるかどうかについては何の情報も入っていません。もし、参加するのであればフランスの代表団と連絡をとり、平和市長会議の取り組みについて協議したいと思っています。

<カナダ・モントリオール市>
ルーシー・ラヴォア

1. もちろん、良いことだと思います。加盟都市がこれほど増加したことは、ますます多くの都市が世界中で勃発しているたくさんの紛争について懸念していることの表れです。恒久平和のために、地方自治体が力を合わせて努力する必要があります。

2. モントリオール市は、モントリオール植物園の日本庭園が造園されて以来、広島市との友好関係を着実に育んできました。平和市長会議(平和連帯都市市長会議)へは、1989年7月、ピエール・ブルク元市長の時代に加盟しました。

3. カナダの国民や都市は国の平和政策を堅持しています。外務省は次のように述べています。「過去50年以上、カナダは新たな国際問題に対処するために、複雑で統合された平和活動で果たす役割を進めてきました。カナダは国連の平和ミッションで常に活動しており、国連の地域ミッションや国連の委任を受けた連合ミッションにも活動を広げてきました。カナダは現在、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)、アフリカ連合(AU)などの平和活動も支援し、参加しています。カナダはこのような平和活動に参加することにより、非常に不安定な情勢に対して、安全保障や安定や支援をもたらし、復興と開発の礎(いしずえ)を築く支援をしています。「平和活動」と一口に言っても、司法や安全保障の制度を改革し、兵士の武装解除や動員解除、社会復帰を推進し人道援助を支援するなど、軍事、外交、人道などの課題を包括した、非常に幅広い活動を指します。

4. 担当部署はありません。平和市長会議に関するすべての業務は、国際局および市長室で行っています。

5. モントリオールでは、特別な活動は計画していません。カナダの他の都市についての情報は、現時点では把握していません。

6. 現時点では、どのようなアクションを起こすべきか提案できません。

<米国オハイオ州ノース・オームズテッド市>
トーマス・オーグレイ市長

1. 加盟都市数が増えたことは実に喜ばしいことです。今、世界情勢に対する不安は高まっているように思います。すべての人が平和な生活を送る機会を与えられるよう、私たちはさらに努力する必要があります。

2. 2006年に、全米市長会議の夏季会議が開かれた際、平和市長会議に加盟しました。世界に平和をもたらし、今まで以上の役割を果たすためです。

3. 中東で続いている戦争や、その戦争が米国の都市や家族に及ぼす影響を人々は深く憂慮しています。市長たちは、この戦争が引き起こしてきた問題を直接感じています。

4. 市長として、私自身が、平和市長会議の取り組みに積極的に関わってきました。オランダのハーグで開催された国際司法裁判所(ICJ)での夏の会議にも参加し、平和のために積極的に取り組むことの重要性について語りました。

5. 私は、全米市長会議を通じて、積極的に活動するつもりです。

6. 現在行っているように、あらゆる人々また権力者達に対して、世界に平和をもたらすため力を合わせるよう、働きかけてほしい。

<ウガンダ・ワキソ市>
スプリング・アライブ会長 マーティン・セブリバ
※スプリング・アライブ=ウガンダと周辺諸国で平和市長会議の実務を担当しているNGO.

1. 世界の潮流はグローバリゼーションと都市化に向かっています。多くの人々は、以前に比べて都市に住むようになってきました。そのため、都市は戦争の舞台となりやすく、核兵器が都市に対して使用される脅威は高まってきました。そのため紛争時に核兵器を都市に対して使用しないことが特に必要になります。人々は広島や長崎で起きたことを忘れることはできません。

 環境の変化をみると、世界のエネルギー消費の需要が増えてきた結果、オゾン層の破壊、地球の温暖化、洪水などが起きています。そのため、各国がより安く、環境にやさしいエネルギー源や原子力を利用したいと思うのは避けられません。それによってプルトニウムのような副産物が兵器の製造に使われる可能性があります。あらゆる面で、世界は核の時代へと向かっています。

2. 2005年9月に加盟しました。ウガンダやアフリカで平和市長会議の活動の先頭に立ってきた地域社会団体(CBO)。「スプリング・アライブ」は、2005年に平和市長会議の存在を知りました。上記の1で述べた考えと、大量破壊をもたらす核兵器の不使用を訴える組織として私たちが賛同できる唯一の組織が平和市長会議だと思っています。

3. ウガンダで多くの都市が加盟したのは、スプリング・アライブのマーティン・セブリバ会長と、平和・紛争研究部長でもあるフランシス・オミア事務局長の献身的努力によります。スプリング・アライブは、ウガンダ都市当局協会(Urban Authorities Association of Uganda=UAAU)とも緊密な連携をとり、平和市長会議に加盟することが大変重要である、ということを都市の幹部に説明しています。またウガンダでは、スプリング・アライブが積極的に動員やマーケティング、ロビー活動などをしてきたことが、加盟都市拡大につながりました。

4. 市長は5年ごとに変わるので、平和市長会議の加盟都市としての継続性を維持するため、また計画・調整・技術的なノウハウを集中させる必要があります。このため、ウガンダでは、スプリング・アライブという独立組織が、コンサルタントが指導する「平和・紛争研究部」を通じて、スプリング・アライブに登録されたすべての市長のために、活動に携わることが決定されました。これは、ウガンダにおける平和市長会議のパイオニアとされるワキソ市の市長と緊密な連携をとって行われました。

 我々の主な活動は、平和市長会議へのリクルート、平和市長会議の活動の啓発、市長への連絡、平和市長会議との調整、情報交換、政府組織や議員へのロビー活動などです。

5. セミナー、ワークショップ、電子媒体や印刷物などを通じた広報活動、市民団体へのロビー活動、核の使用や軍縮などに関する時局的な問題についての公開討論など、様々な活動を計画しています。これらの活動は、統括組織であるスプリング・アライブが運営するので、加盟都市は、旅費等の予算に合わせて参加します。

6. 平和市長会議は、下院議長に下記のメッセージをアピールすべきです。

○都市に対する核兵器の脅威は非常に現実味を帯びてきており、主要国(G8)が道徳的な権限で、イランのように核技術を採用しようとしている国を阻止し、核廃絶を率先する。

○国際原子力機関(IAEA)のように、西側の大国によって管理されたり影響を受けたりしない公平な国際的組織によって、すべての核技術を管理する。

 これは大変重要なテーマであり、調査文書をまとめる必要があります。様々な利害関係者の考えが反映されるよう、そしてG8の有力なグループや下院議長とも連携できるようなものにするべきです。

<オーストラリア・メルボルン市>
ジェーン・シャーウッド

メルボルン市は、核兵器廃絶と世界恒久平和のための平和市長会議の取り組みに敬意を表します。2001年5月、メルボルン市議会は非核都市宣言をしました。さらに、平和市長会議の目的を支持するため、様々なプログラムや取り組みを通じ、地域レベルで平和構築と和解の推進につとめています。

メルボルン市は、2008年3月16-21日に、「ハーモニーウィーク(調和週間)」として、文化の多様性を祝います。この祭典は、多文化的コミュニティが社会の中で果たす重要な役割を認識し、地域の人々が、文化的多様性やメルボルンの発展に欠かせない多くの活力ある民族的コミュニティについて学ぶ機会を提供するものです。

さらにメルボルン市は自治体として、先住民族のコミュニティに影響を与える問題に関した政策を実践しています。先住民の利益を認め、そのための施策、合意、協定がつくられました。このメルボルン市の取り組みは、先住民族のコミュニティとの関係を強化し、先住民族の問題に関して、組織全体の関心を高めることになりました。

市議会は、多様性をメルボルンの最大の資産の一つとして捉える「結束した市」という概念を今後も継続し、発展させていきます。この概念は、地域あるいはメルボルンを訪れる人々への事業やサービスに反映されています。このようにメルボルンは、より広範囲にわたる、調和のとれた地球環境に寄与する平和なコミュニティの発展を推進したいと考えています。

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