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原爆投下直後に被爆者治療 祖父のヒロシマ 教えて

■記者 馬上稔子

 原爆投下直後に広島赤十字病院(現広島赤十字・原爆病院、広島市中区)で被爆者を治療した内科医の故土井茂さんの足跡を、スイス・チューリヒに住む孫娘で映像作家のアヤ・ドメーニグさん(37)が調べている。記録映画の制作を目指し、祖父の知人たちを訪ね歩いている。

 土井さんの妻清美さん(83)=中区=によると、土井さんは、JR矢賀駅付近(東区)の芸備線車内から、原爆の閃光(せんこう)を目撃した。同病院に歩いて出勤し、被爆者を治療した。疎開していた家族と10日後に再会したが、自らの体験はほとんど話さなかったという。1991年に77歳で亡くなった。

 ドメーニグさんにとって、土井さんは母方の祖父にあたる。被爆者の高齢化が進む中、欧州に原爆被害の実態を伝える映画の制作に使命感を覚えた。

 来日前にインターネットなどで、当時の看護師をリストアップ。3月30日からは清美さんが家族と暮らす家に滞在して約10人に会ったが、いずれも土井さんとは部署が違うなど交流は薄かった。流ちょうな日本語で平和団体や原爆資料館も訪ね歩いたが、当時の様子はつかめなかった。

 29日に帰国後は調査と映画制作の資金集めを続け、来年再び広島を訪れる。ドメーニグさんは「少しでも祖父が見たヒロシマを知りたい。私や祖母へ情報を寄せてください」と呼び掛けている。清美さんTel082(241)2344。

(2010年4月29日朝刊掲載)

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