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1万人「核なき世界を」 NPT再検討会議 被爆者らNYでデモ

■記者 岡田浩平、金崎由美(ニューヨーク発)

 「一緒に核兵器、戦争のない世界を築こう」。史上唯一の原爆投下国で、今なお核超大国である米国の象徴、ニューヨークの摩天楼に2日、被爆者の訴えが響いた。その迫力に足を止め、聞き入る人も。各国の市民約1万人によるデモ行進。核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功に向け、被爆者の魂の叫びが共鳴した。

 行進の出発点はタイムズスクエア近く。前夜の爆発物発見騒動を気にも留めぬように、参加者は次々と詰めかけた。「NO NUKES」「ノーモア ヒバクシャ」。横断幕やゼッケンがひしめく。

 出発集会で被爆者を代表して証言した木村緋紗子さん(73)=仙台市=は広島の原爆で失った父親の遺影を手に「今も父に会いたい。父を返せ」と声を絞り出した。

 非人道的な兵器が今なお存在することに、ニューハンプシャー州の高校1年オードリー・コールマンさん(16)は「原爆被害は過去じゃないことを学校で教えられてないのだと痛感した。木村さんの言葉を必ず学校で伝えます」とこたえた。

 デモ行進は、木村さんや広島市の秋葉忠利市長、長崎市の田上富久市長たちを先頭に、市民が思い思いのペースで参加した。約3キロを歩いた箕牧智之さん(68)=広島県北広島町=は「熱いアピールの場になった。再検討会議の成果につながってほしい」と期待を込めた。

 被爆者たちをサポートする米国在住日本人たちのボランティアチーム(約80人)の一人、会社員の能亜・リースさん(27)はA4判のビラにまとめた被爆証言を配った。「誰が原爆を落としたのかではなく、もう落とさないでというシンプルなメッセージ。私自身も胸が打たれる」と汗をぬぐっていた。

(2010年5月4日朝刊掲載)

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