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被爆証言 声失う訪問者 NY原爆展 「核いらぬ」と誓い

■記者 岡田浩平(ニューヨーク発)

 街を消し、人生を奪った原爆の悲惨さに触れた誰もが「核兵器はいらない」と誓った。米ニューヨークの国連本部で3日、核拡散防止条約(NPT)再検討会議と同時に始まった日本被団協の原爆展。渡米した被爆者が体験を語り、「核兵器廃絶を」と何度も声を振り絞った。

 国連本部ビル1階のメーンギャラリーに50枚のパネルが並ぶ。広島市の原爆ドーム一帯の被爆前後、大やけどした被爆者…。昨年5月に中国新聞紙面で発表したノーベル平和賞受賞者17人による「ヒロシマ・ナガサキ宣言」の展示もある。

 原爆で肉をえぐりとられた上半身をさらした男性の写真。ウズベキスタン人の国連職員ナルキザ・トゥラポバさん(27)は、その当人である長崎被爆者の谷口稜曄(すみてる)さんに導かれ、傷あとに右手で触れた。「言葉にならない。こんなに残虐な兵器はすぐになくすべきだ」  パネルを食い入るように見つめていた国際赤十字委員会のピーター・ハービーさん。「このパネルを議場に置いて議論すればいい」。NPT再検討会議の各国政府代表に被団協は電子メールで来場を呼び掛けたが、この日はほとんど姿は見られなかった。

 「世界はあまりに核兵器の恐ろしさを知らない」。ブラジル被爆者平和協会会長の森田隆さん(86)が声を張り上げた。その訴えに深くうなずいたのは高須幸雄国連大使。「各国代表にもっと被爆の実態を知ってもらわないといけない」と語り、会場を後にした。

(2010年5月5日朝刊掲載)

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