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「廃絶への約束」再確認を 福山・外務副大臣 核保有国に要請

■記者 金崎由美(ニューヨーク発)

 国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議は4日、加盟国のスピーチを続けた。日本から政府代表として福山哲郎外務副大臣が登壇し、前々回の2000年会議で合意した「核兵器廃絶への明確な約束」を保有国が再確認するよう求めた。

 福山氏はまず「唯一の戦争被爆国であるわが国は核廃絶へ先頭に立って行動する道義的な責任がある。非核三原則の堅持を誓う」との鳩山由紀夫首相のメッセージを紹介した。

 また、核兵器の悲惨さを訴えている被爆者の思いを共有するよう各加盟国に訴えたほか、20年までの廃絶を実現するため平和市長会議が提唱している「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に触れ、市民社会との連携や軍縮・不拡散教育、被爆体験継承への取り組みに意欲を示した。

 核軍縮面では「廃絶への明確な約束」をはじめ、透明性を伴う核削減▽核兵器の役割低減への言及▽非保有国を核攻撃しないと約束する「消極的安全保障」―などをすべての保有国に要請した。

 さらに北朝鮮の核開発を非難し放棄を要求。イランの核問題には懸念を表明した。原子力の平和利用推進や国際原子力機関(IAEA)強化も訴えた。

 この日は核兵器保有国の中国とフランス、非保有国のドイツやニュージーランドなどもスピーチした。政府演説は5日も続く。


<解説>被爆国の独自色出せず


■記者 金崎由美、岡田浩平(ニューヨーク発)

 NPT再検討会議での日本政府演説は、核兵器廃絶の「先頭に立つ」との言葉とは裏腹に、総じて米国の核兵器政策に追従する姿勢が色濃く出ている。インパクトに乏しく、被爆国の独自色とは言い難い内容だ。

 核兵器の役割低減など核軍縮に関する提案内容は、今回会議にオーストラリア政府と共同提出した作業文書に沿う。オバマ米政権が保有核弾頭数を公表し、条件付きながら消極的安全保障を打ち出したことへの評価も付け加えた。

 これらは核兵器削減にとって重要なステップだが、米国の核政策変更にしても日本のイニシアチブで実現したわけではない。米ロ合わせて数千発ある非戦略核の削減、潘基文(バンキムン)国連事務総長らも言及した核兵器禁止条約、期限付きの廃絶目標の提示など、核兵器ゼロを実現する提案はほかにも数多くあるはずだ。

 月並みな提案は、核兵器廃絶を訴えながら自国の安全保障は米国の核兵器に頼る被爆国の矛盾であり限界でもある。そう受け取られても仕方あるまい。

 演説が、今回会議に合わせてニューヨーク入りした被爆者の思いを踏まえ、被爆体験の継承や市民社会との連携の重要性に触れた点は、日本の政権交代がもたらした変化ともいえる。何より心がこもっていた。それだけに、全加盟国による今後の討議の先頭に立つとの意欲が伝わってこなかったのが、極めて残念だ。

(2010年5月6日朝刊掲載)

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