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被爆者の「心の傷」意識調査 新年度広島市 3万人に対象拡大

■記者 森田裕美

 広島市は新年度、被爆者や、被爆直後に降った「黒い雨」に打たれた人の心理的影響を再び調査する。原爆体験者健康意識調査(仮称)とし、約3万人が対象の大規模調査となる。被爆による心的外傷後ストレス障害(PTSD)など「心の傷」に医学的に迫り、結果を基に国へ援護策の充実を働きかける。

 市は2002年度に約1万人を対象にアンケートし、被爆者援護法上の被爆者でなくても、原爆の閃光(せんこう)を見たり、黒い雨を浴びたりした人は、そうでない人よりも心身の健康影響を訴える率が高い傾向があると結論づけた。しかし、国は「科学的、合理的根拠になり得ない」と援護拡大を認めなかったことから、市は対象拡大など手法を一部変更して再調査することを決めた。

 今回は、1945年当時から現在まで市内に暮らしている約3万人(うち被爆者が2万人)を対象に、被爆や黒い雨体験の有無、健康状態について郵便アンケートに答えてもらう。回答者から約2000人を抽出し、医師や臨床心理士による個別面談もする。

 並行して、放射性降下物による内部被曝(ひばく)や低線量被曝が人体に及ぼす影響についての情報収集に努める。

 市は調査に当たり、精神、疫学などの専門家約10人で研究会を設け、具体的な方法を詰める。影響があるとの結果がまとまれば、国に、健康診断特例区域(黒い雨の大雨地域)の拡大を働き掛けていく。

 市は新年度一般会計当初予算案に調査研究費4300万円を計上した。「被爆者や体験者に話を聞くことができる最後のチャンス」と、市原爆被害対策部は調査を被爆体験の継承策とも位置付けている。

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