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核廃絶へ政治の意志を NPT会議 秋葉市長演説

■記者 岡田浩平(ニューヨーク)

 米ニューヨークの国連本部で開会中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は7日、非政府組織(NGO)代表が順にスピーチする「NGOプレゼンテーション」があった。秋葉忠利広島市長と田上富久長崎市長、長崎で被爆した谷口稜曄(すみてる)さん(81)らが演説し、原爆の惨禍を受け止め、世界から必ず核兵器をなくすよう訴えた。

 平和市長会議の会長を務める秋葉市長は「被爆者は自らの苦しみを通し、核兵器は絶対悪だと教えてくれた」と指摘。平均75歳を超えた被爆者が生きている間に核兵器をなくすべきだとし、平和市長会議が掲げる2020年までの廃絶の必要性を強調した。

 さらに「被爆者と危機感を共有する指導者が廃絶のうねりを起こしている」としてオバマ米大統領や潘(バン)基文(キムン)国連事務総長の取り組みを歓迎。各国とりわけ国連に対し廃絶への「政治の意志」を高めるよう呼び掛け、「私たちは手を携え、廃絶を達成することができる」と締めくくった。

 これに先立ち長崎被災協会長の谷口さんが被爆者を代表して体験を証言。原爆で背中に大やけどを負った自身の写真を掲げながら壮絶な苦しみを訴え、「人間が人間として生きていくため、核兵器を一発たりとも残してはならない」と声を振り絞った。

 長崎市の田上市長も「なぜ被爆者が核兵器のない世界を求めるのか、深く理解すべきだ」とアピール。核兵器禁止条約の交渉開始と締結を各国に強く求めた。

 プレゼンテーションは、NGOの意見を反映するため再検討会議の議事日程に組み込まれた。ほかに地雷禁止運動を主導しノーベル平和賞を受賞した米国のジョディ・ウイリアムズ氏らがスピーチした。


広島市長の演説要旨

 7日のNPT再検討会議で、広島市の秋葉忠利市長が行った演説の要旨は次の通り。

 私たちは繰り返してはいけない。被爆者の言葉に「ほかの誰にも自分たちのような苦しみを味わってほしくない」というものがある。ほかの人の中には対立する人も含む。報復でなく和解への思いが込められた言葉だ。

 平和市長会議は、2020年までに核兵器のない世界を実現できると信じている。

 被爆者の多くは、75歳以上となった。私たちは被爆者が生きている間に、核兵器を廃絶する責任がある。必要なのは政治的な意志だ。皆さんの持つ力を、未来の世代のために使ってほしい。平和市長会議に参加する都市の市民や、広島と長崎の被爆者は核兵器廃絶を実現するために、できることをすべてやる。力を合わせれば核兵器は必ず廃絶できる。私たちは必ずなしとげられる。

(2010年5月9日朝刊掲載)

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