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NPT会議 核廃絶へ14年国際会議 合意文書素案に盛る

■記者 金崎由美(ニューヨーク発)

 米ニューヨークで開会中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の主要3委員会は14日、合意文書の素案をまとめ、カバクトゥラン議長に提出した。第1委員会(核軍縮)の文書は、核兵器廃絶へ向けた26の行動計画などで構成。核保有国は2011年までに核軍縮促進の交渉を開始し、結果を翌12年にNPT加盟国に報告することや、廃絶への行程表を作るための国際会議を2014年に開くことなどを盛り込んだ。

 素案はこのほか第2(核不拡散)、第3(原子力の平和利用)の各委員会が出した。それぞれ11~19ページ。週明けから素案を基に各委員会で議論を重ね、24日までに内容を決める。閉会する28日までに、文書の一本化と採択を目指す。

 核軍縮では「核全廃が核の使用、核による脅威に対する唯一完全な保障」と強調。非保有国に対して核兵器を使わないと約束する「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせることが、核不拡散体制の強化になるとする。

 また、00年会議で合意した保有国による「核廃絶への明確な約束」を再確認。核兵器禁止条約などの法的枠組みが、廃絶達成に役立つとする。核実験を強行した北朝鮮が保有国の地位を得ることはないと明言。事実上の保有国のイスラエル、インド、パキスタンに非保有国としてのNPT加盟を求めた。

 不拡散分野では中東の非核地帯創設に言及した「中東決議」(1995年)の有効性を宣言した。一方で具体的な表記を避け、協議の難航を示唆した。

 平和利用分野では、03年の北朝鮮による脱退宣言を教訓に、脱退国に対して国連安全保障理事会の速やかな討議を求めている。核開発疑惑のあるイランが脱退する可能性が念頭にあるとみられる。


<解説>NPT合意文書素案 核保有国の反対必至


■記者 金崎由美(ニューヨーク発)

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議で14日示された合意文書の素案は、期限を区切った廃絶目標の必要性と、「核兵器禁止条約」に言及した。画期的な内容だ。しかし、核保有国の強い反対が予想され、合意文書に残るかは不透明だ。

 素案は廃絶達成に必要な法的枠組みとして、潘基文(バン・キムン)国連事務総長が2008年に公表した「核軍縮のための五つの提案」を重視。とりわけ禁止条約を有効な手段と明記した。

 国際的な非政府組織(NGO)などが、禁止条約の交渉入りを今回会議の重点項目と位置づけ、合意文書に盛り込むよう働きかけてきた成果といえよう。20年までの核兵器廃絶を目指す平和市長会議(会長・秋葉忠利広島市長)の訴えとも重なる。

 この素案をたたき台に、週明けから議論が本格化する。核保有5カ国は、廃絶目標の設定に反対すると予想される。中国を除く4カ国は、禁止条約にこれまで否定的な立場だ。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のプログラムマネジャー、ティム・ライト氏は「昨年の準備会合では、勧告の1回目の素案が禁止条約に言及していたが、特にフランスとロシアの強い反対で削られた」と警戒を強める。

 希望はある。今回会議では、エジプトなどの非同盟諸国や、オーストリア、スイスなど核軍縮が進まない現状を懸念する非核保有国が、禁止条約の必要性を強調してきた。非公開の小委員会でも「一部の国から強い主張がされた」(非同盟諸国の外交筋)という。

 しかし肝心の日本はこれまで廃絶の期限設定や、禁止条約への賛同を正式に表明してはいない。多くの非保有国が廃絶実現へ具体的な発言をする中、被爆国はその責務を強く認識すべきだ。

(2010年5月16日朝刊掲)

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