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NPT会議最終文書採択 「被爆者の声届いた」

■記者 林淳一郎

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が核軍縮の行動計画を盛り込んだ最終文書を採択したことに広島の被爆者たちは29日、「一定の進歩」と歓迎した。一方で、核兵器廃絶に向けた着実な前進や、被爆国日本の主導力を求める声も相次いだ。

 今回、日本被団協の訪米代表団に加わって米国で被爆証言をした上松利枝さん(75)=江田島市=は「被爆者の声が届いた」。訪米代表団長を務めた広島県被団協の坪井直理事長(85)は「2005年の前回会議に比べて喜ばしい結果。だが、もろ手を挙げて万歳ではない」と、より具体的な核兵器廃絶の道筋を描くよう望む。

 核兵器禁止条約について文書に盛り込まれたことを評価する声も目立った。

 国連の潘基文(バンキムン)事務総長に廃絶に向けた提案書を手渡した「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(71)は「会議では核兵器禁止条約の制定を求める欧州諸国の発言もあった。連携して条約づくりに取り組む機運が高まる」。

 現地で会議を見守った英国アクロニム研究所のレベッカ・ジョンソン所長(55)、ドイツの核軍縮専門家レギーナ・ハーゲンさん(52)も「廃絶のための法的枠組みの必要性が最終文書に明記されたことは成果」などと、条約実現化に向け気を引き締めていた。

 一方、当初の素案にあった核兵器廃絶への行程表を作るための国際会議開催が消えたことや、被爆国日本の首相も外相も会議に参加しなかったことへの失望も。

 日本被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長(78)は「廃絶への明確な道程が示されず不満。加盟国の行動をさらに求めたい」。

 もう一つの広島県被団協はこの日、被爆2・3世たちが広島市中区で、訪米した代表団の帰国報告会を開いた。金子一士理事長(84)は「核保有国を動かすには、被爆国日本政府が本気で廃絶の先頭に立つことが大事」と言葉に力を込めていた。

 日本原水協の高草木博事務局長(65)は「核抑止力の信奉こそが廃絶の障害だ」と、米国など核保有国や「核の傘」に依存する日本の姿勢をただす。

 20年までの廃絶の道筋を描く平和市長会議の「ヒロシマ・ナガサキ議定書」採択を現地でアピールしたYes!キャンペーン実行委員会の安彦恵里香事務局長(31)。「議定書採択の目的は達成できなかったが、行動は無駄ではなかった。廃絶に向け日本政府がイニシアチブを取るよう働きかけを続ける」と気持ちを新たにした。

(2010年5月30日朝刊掲載)

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