×

ニュース

平和公園に中国人ガイド 広島大大学院の留学生・朱さん

■記者 小林可奈

 広島大大学院の中国人留学生朱雯さん(26)=広島市中区=が中区の平和記念公園で外国人にボランティアガイドを始めた。公園で活動する外国人ガイドはほとんどいない中、朱さんは日中英3カ国語を話せる。原爆資料館啓発担当は「貴重な存在。頑張ってほしい」と期待している。

 毎週月曜日、原爆ドーム前で外国人観光客に声をかける。被爆者の写真や絵など50枚を手に、英語か中国語で「核兵器は恐ろしい。数十年たっても後遺症に苦しめられる」などと説明する。3月中旬から始め、約50人を案内した。

 四川省出身。2007年4月に来日し、異文化コミュニケーションを学ぶ。2009年11月、平和記念公園に母国の海軍関係者を案内したがうまく説明できず、「原爆について学びたい」と考えていた。アルバイト先の料理店で、日本人のボランティアガイドと知り合い、活動を決意した。

 中国では日本の侵略戦争により、原爆投下に対して肯定的な意見もある。ただ、朱さんは「両国が歴史を見つめ、戦争や核兵器がない世界を築く努力が必要。ガイド活動がその役に立つ」という。

 原爆資料館によると、同館には223人の日本人ガイドが登録しているが、外国人ガイドは中国人1人しかいない。住田達哉主査は「朱さんのようにフリーで活動する人は把握していないが、ごく少数。外国人観光客との貴重な橋渡し役だ」とエールを送る。

 これまでに同胞4人をガイドした朱さんは「母国語で案内すると、相手の理解も深まった。留学生に呼び掛け、活動を広げたい」と希望を膨らませている。朱さんは2012年まで同大学院で学ぶ予定でいる。

(2010年6月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ