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レストハウスの「前身」を20分の1模型に 岩国の島木さん

■記者 標葉知美

 広島市中区の平和記念公園にレストハウスとして残る「大正屋呉服店」の20分の1模型を、岩国市川西のドールハウス作家島木英文さん(59)が作っている。完成すれば、平和公園復元映画製作委員会(田辺雅章代表)が進める被爆前の旧中島地区(現・平和記念公園)の再現映像に、初めて活用してもらう。

 模型は高さ45センチ、幅90センチ、奥行き65センチ。製作委から提供された設計図などを基に昨年7月から制作を始め、来月中旬にも完成する。

 1級建築士でもある島木さんは、今まで日本家屋の模型を手掛けたが、洋館は初めて。光と影へのこだわりや細部の精巧さという特徴は同じで、店頭に並ぶ反物や子どもの晴れ着は、すべて妻の啓子さん(62)の手作りだ。

 「一瞬で普通の生活が奪われる。戦争の意味を考えてもらえれば…」。建物だけではなく、そこで暮らす人々が幸せだった様子を浮かび上がらせるよう仕上げを急いでいる。

 秋には、原爆ドームの前身の県産業奨励館の模型に着手する考えだ。「ヒロシマを表現する手段の一つにドールハウスが加われば」と意欲を見せる。

 コンピューターグラフィックスに精密な模型を組み合わせると映像の訴求力が増すという。田辺代表は「模型の画像を取り入れることで、よりリアルに被爆前の暮らしを再現したい」と期待している。

大正屋呉服店
 1929年建設。鉄筋3階建て地下1階。繊維統制令で閉鎖され、原爆投下時は「燃料会館」として使われていた。爆心地からわずか170メートルで、屋根などを破損し、地下室を除き全焼した。勤務中の37人は地下にいた1人を除き全員死亡。市が大幅改修し、1982年にレストハウスにした。

(2010年6月28日朝刊掲載)

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