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延長可否 知事判断は 上関原発計画 埋め立て免許 中電、11日回答期限 国の方向性も影響

 中国電力による上関原発建設予定地(山口県上関町)の公有水面埋め立て免許の延長申請をめぐり、山口県が中電に求めた5度目の補足説明の回答期限が11日に迫る。2月に就任した村岡嗣政知事は、回答を踏まえ可否を判断する。しかし焦点となる国のエネルギー政策の見直しで、上関原発がどう位置付けられるかはなお「不透明」(経済産業省)。審査の長期化に対する反対派住民の反発が強まる中、村岡知事はどんな判断を下すのか。(門戸隆彦)

 昨年3月の県議会定例会で故山本繁太郎前知事は、延長申請の可否判断の1年程度の先送りを表明した。上関原発が国のエネルギー政策に今後、どう位置付けられるかを中電に証明させる必要があるとの理由からだ。

 それまでは「不許可にすることになる」と述べていた山本前知事。2012年末に政権復帰した自民党が、民主党政権の「30年代に原発ゼロ」を見直す方針を示し、その動向を見極める姿勢に転じた。村岡知事も踏襲する。

 焦点となるのは、福島第1原発事故を踏まえて国が進めるエネルギー基本計画の見直しだ。安倍晋三首相は年初、新増設を「現在のところ、全く想定していない」と述べていた。

 2月下旬に示された新しい基本計画の政府案は原発の再稼働による原発利用を明記する一方、上関原発を含めた新増設の可否に触れていない。自民、公明両党の作業チームは今月3日、政府案を微修正して了承。政府は週内の閣議決定を目指す。

 新増設をめぐる国の方針が示されない中、中電は3月27日に発表した本年度の電力供給計画で、上関原発の着工時期などを「未定」とした。苅田知英社長は県への回答について「エネルギー政策の議論の内容を踏まえて期限までに答えたい」と述べるにとどめた。

 その前日には、建設に反対する住民たちが県庁を訪れ、建設中止を求める村岡知事宛ての申し入れ書と約10万人分の署名を提出。「原発建設計画は不透明なままだ」として免許延長を不許可にするよう求めた。

 山口県知事は免許権者であるとともに、県は中電の株式の10%弱を持つ筆頭株主。上関原発計画を左右する重要な立ち位置にある。「これ以上の先送りは許されない。村岡知事の政策的な判断が初めて示される重大な局面だ」と社民党県連合代表の佐々木明美県議。

 一方で上関町を含む熊毛郡区選出の吉井利行県議(自民党新生会)は「1年前と状況は変わらない。国の方向性が示されるまで許可不許可の判断はすべきでない」とする。県議会でもさまざまな声が交錯する。

 一方、行政手続法は恣意(しい)的な審査の引き延ばしなどを防ぐため、標準処理期間の設定を求めており、県は32日以内をめどと内規で定める。村岡知事は「案件で審査期間は異なる。今回は慎重な審査が必要。材料がそろって初めて判断ができる」と、判断時期も明らかにしていない。

 反対派住民は「事務の誠実な執行に反する」として標準処理期間の満了日の昨年2月26日以降に発生した人件費などを知事が県に返還するよう求めて山口地裁に提訴し、係争中。判断を先送りすれば反発がさらに強まるのは必至だ。

上関原発建設計画の埋め立て免許
 山口県上関町長島の建設予定地の海上部分約14万平方メートルを埋め立てる。山口県は2008年10月に免許交付。中電は09年10月に工事着手したが、反対派の抗議や福島第1原発事故の影響で、ほとんど進まないまま12年10月に免許の期限切れを迎えた。中電は期限切れ直前の同月5日、免許の3年延長を県に申請。県は指定期間内に工事を完了できなかった理由などを中電に繰り返し照会し、昨年3月4日には山本繁太郎前知事が免許の可否判断を1年程度先送りすることを表明。同19日に5度目の補足説明を求めた。

(2014年4月9日朝刊掲載)

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