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被爆地復興 報告書に 都市整備や報道など紹介 識者執筆 広島県・市発表

 広島県と広島市は9日、米国の原爆投下から復興した広島の歩みを検証した報告書を発表した。都市整備などハード面だけでなく、当時の報道や医療環境など市民生活に関わりが深いソフト面にも着目。各分野の専門家15人が多角的に分析、執筆した。平和都市構築のプロセスを伝える教材として、東日本大震災の被災地や紛争国の再興に役立ててもらう。

 タイトルは「広島の復興経験を生かすために~廃虚からの再生」。県と市でつくる実行委員会が2012~13年度の研究成果としてまとめた。広島大や原爆資料館の有識者たちが執筆した。A4判、164ページ。800部印刷した。

 報告書は、市営基町アパート(中区)など再開発をめぐる動きを特集。都市基盤の整備が進む一方、立ち退きや不法建築問題など復興過程の「二面性」を紹介した。「復興の道はまっすぐではなく、時に対立や衝突も起きる。それを克服することで復興は確固たるものとなる」とした。

 都市機能の再生をメーンにした文献が多い中、市民の営みに光を当てたのも特徴。メディアが被爆の惨禍や戦後の闇市、青空教室など市民の生活再建をどう伝えたかを紹介し「窮乏の中でも子どもたちは再開された学校に通い、明日を夢みた」とつづった。被爆者医療の変遷もまとめ「いま世界に広がる被ばく者医療に貢献している」とした。

 県、市は報告書を県内の公立図書館や大学に配布し、本年度内に英語版や概要版をホームページに掲載する。編集委員長を務めた広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長は「どんな破壊に直面しても復興は可能。悲しみや痛みを乗り越えてきた広島の姿が報告書を通じて世界に広がってほしい」と述べた。(金刺大五)

(2014年4月10日朝刊掲載)

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