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社説・コラム

【解説】NPDI外相会合 核兵器 遠い非合法化 「頼る国」の論理に偏る

 軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)は、12日に被爆地で発表した「広島宣言」で、核兵器の非合法化に一切触れなかった。被爆地で初めて繰り広げられた外相会合は、国の安全を核兵器に「頼る国」「頼らない国」の間に横たわる溝を埋め切れなかった。

 核兵器の非合法化へ行動を起こすべきだという声は今、各国の非政府組織(NGO)から政府まで強く、太くなっている。なぜか。核兵器保有国や「核の傘」の下にある日本などが言う「一つずつブロックを積み上げる」ような軍縮では、「核兵器のない世界」というゴールが見えないとの認識があるからだ。

 広島宣言にある「すべての種類の核兵器の体系的かつ継続的な削減」や安全保障上の「核兵器の役割の低減」は確かに重要だ。ただ、これらはこれまでも言われてきたが核兵器がゼロに近づく気配はない。発足3年半が過ぎたNPDIの成果は、核兵器保有国が軍縮を報告する際の共通フォームの提案にすぎない。「現実的かつ実践的なアプローチ」が限界だからこそ、非人道性をてこにした非合法化に期待が掛かっている。

 NPDIは、非合法化に積極的な非同盟諸国(NAM)から、米国と「核同盟」を組む北大西洋条約機構(NATO)まで幅広い参加国を売りにしている。しかし非合法化に触れさえもしない宣言は「頼る国」の論理に偏っていると言わざるをえない。今回の会合には、国際社会で非合法化の動きをリードするメキシコは外相本人が出席しなかった。「居心地が悪く脱退も視野にあるのでは」(外交官経験者)との声も聞く。

 今回の会合が失敗だったというわけではない。「被爆者の痛みを知れば核兵器が要るなんて言えない。持つことがいかに品格がないか分かるはずだ」。11日の核軍縮シンポジウムで松井一実市長が訴えたように、原爆による市民一人一人の生と死をありのままに伝える被爆地ほど「核兵器のない世界」を話し合うにふさわしい地はない。核超大国の米国の政府高官もこの機会に訪れた。

 広島宣言で、政治指導者に広島、長崎を訪れるよう呼び掛けた外相たち。被爆地で、老いた被爆者や次代を担う子どもたちから託されたバトンを受け、次の一歩を踏み出すのはあなたたちだ。(岡田浩平)

(2014年4月13日朝刊掲載)

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