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広島城天守閣は自壊 原爆爆風説を覆す 学芸員が推定

■記者 明知隼二

 原爆の爆風で吹き飛んだと信じられていた広島城(広島市中区)の天守閣が、低層階の柱が破壊されたために自らの重さで崩壊した可能性が高いことが分かった。当時の目撃証言や写真を基に、同城の学芸員が推定した。16日から天守閣内で、関連する資料を展示する。

 本田美和子学芸員と玉置和弘学芸員は被爆直後の航空写真に、爆心地から反対となる北側の堀に天守閣の残骸(ざんがい)が写っていない点に着目。当時城内にあった中国軍管区司令部や、城の北東にあった旧陸軍幼年学校で崩壊途中の城を見た人を探し、被爆後の天守閣の写真などをあらためて調べた。

 その結果、5層構造の天守閣が、上から3層は原形をとどめたまま崩れていったとの証言を得たほか、被爆後の別の写真には天守閣があった場所にがれきが残っていることも判明した。

 それらを基に、原爆の爆風が天守閣の低層部分を南から襲って柱を破壊。上から3層が原形をとどめたままいったん石垣の北東側にずり落ち、その後間もなく、支える柱が耐えきれず崩壊した―と結論づけた。

 本田学芸員らは「科学的な根拠のないまま吹き飛ばされたと信じられていたのだろう。物理学や建築の専門家の議論が始まってほしい」としている。

 資料展は9月5日までで、大人360円、高校生以下180円。

(2010年7月14日朝刊掲載)

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