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社説・コラム

憲法 解釈変更を問う 外相・岸田文雄さん

時代の変化 対応が責務

派閥で意思統一はせず

 わが国は、厳しい安全保障環境の中に置かれている。国の平和と安定を守るために何を最低限すべきかという議論の中で出てきたのが、集団的自衛権の議論。国民の生命と財産、日本の国の自由と独立を守るのは、政治家として、政権を担う者として、どうしても果たさなければならない責任だ。時代の変化に対応できる、安全保障の備えと議論をしないといけない。

 これを日本の「右傾化」と捉えるような国内外の指摘は全く当たらない。わが国の戦後69年の歩みは、平和国家として国際社会から認められている。自信と誇りを持って歩み続けたい。

 原爆が初めて投下された広島1区選出。自民党内で「軽武装、経済重視」を伝統的に掲げてきた政策集団「宏池会」(岸田派)の会長を務める。安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を可能とする憲法の解釈変更に積極的と映る中、バランス役を期待する声が上がる。7日には、派内で集団的自衛権に関する勉強会を開く。

  宏池会に期待があるのは承知しているが、今、議論しているのは安全保障。国の根幹、国民の生存権に関わる基本的な議論だ。立場や派閥を超えて議論しなければいけない。

 勉強会を開くのは、今日までの経緯や集団的自衛権への理解をしっかりと深めることで、来るべき党内の議論に備えたいと考えたからだ。宏池会内の雰囲気としては、ある程度の共通認識は持っている。だが、派閥として結論を出すとか、意思を統一することは考えていない。

 勉強会を通じて深めた見識を持って、個々のメンバーが党の議論に貢献してくれればいい。私は安倍内閣の一員なので、個人的な見解を申し上げるのは差し控える。閣僚の立場から発言していく。

 2012年12月、第2次安倍政権の発足とともに外相に就任した。「核兵器のない世界の実現はライフワーク」と、被爆地の政治家として独自の思いを語る。その一方で、安倍首相の言動を擁護し、言葉を慎重に選ぶ場面も目立っている。

 閣僚それぞれに個人的な考えはあるが、内閣として結論を出した以上、一致結束していくのは当然だ。閣内でも健全な議論は行われるべきだと思うが、結論が出た以上は乱れることなく結束していきたい。内閣の一員である以上は(首相を支えるという)職責をしっかり全うする。

 行使を認める憲法解釈の変更をめぐり、安倍首相の「最高責任者は私だ」という国会答弁が批判された。しかし、行政府における憲法解釈に内閣が責任を負うのは当然のこと。内閣の責任者は総理大臣で、当たり前のことを言ったと私は考えている。(聞き手は藤村潤平)

 ≪宏池会≫自民党の結党2年後の1957年、池田勇人元首相(竹原市出身)を物心両面から支援することを目的に発足した。他の派閥が消滅したり合従連衡を繰り返したりする中で、党草創期から存続。所属する国会議員には「保守本流」との意識が強い。吉田茂元首相以来の軽武装、経済重視、アジア諸国との協調主義の路線を継承し、党内では「リベラル」の立場にある。

 池田氏をはじめ、大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮沢喜一氏の計4人の首相を輩出した。特に86~98年に会長を務めた宮沢氏は、一貫して憲法9条の改正に慎重な姿勢を示し、政界きっての「ハト派」「護憲派」として知られた。

 現在の会長、岸田文雄氏(広島1区)は2012年10月、同党元幹事長の古賀誠氏の後任として就任。会長を支えるナンバー2の座長は、林芳正農相(参院山口)が務めている。衆参45人が所属し、第3派閥。

(2014年4月5日朝刊掲載)

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