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社説・コラム

『この人』 駐広島韓国総領事に就任 徐張恩さん

市民同士の交流支える

 竹島(韓国名・独島(トクト))の領土問題などで日韓関係が冷え込む中、「民間や自治体レベルの協力関係を強めることが重要だ」と強調する。大統領が必要な場合に特別起用・任命する「特任公館長」として、3月30日、駐広島韓国総領事に就任した。

 広島市を訪れるのは今回が初めて。住み始めたマンション8階から広島城や縮景園などの街並みが望める。「69年前に原爆の惨禍があったとは思えないほどの復興を遂げている」と印象を語った。

 広島韓国総領事館(南区)の管轄は広島、山口、島根、愛媛、高知の5県。母国との間で自治体16件、高校19件が友好・姉妹縁組を結んでおり、「交流が盛んで革新的な地域」と受け止めている。そんな市民交流を支えていくことが、「両国の関係改善の礎にもなる」と信じる。

 特任公館長は職業外交官ではない。本業は政治家。ソウル市の政務副市長として東京や横浜、北海道との交流事業で成果を挙げた。セヌリ党の要職を担い、2012年の大統領選では、党中央選挙対策委員会の戦略企画団長として、現職の朴槿恵(パク・クネ)氏を支えた。

 今回の着任について、「国際情勢が混迷し、平和への期待が高まっている。広島へ来たことは意義深い」と感じる。広島市長が会長を務め、20年までに核兵器廃絶を目指す「平和首長会議」への韓国内の参加自治体の増加に力を注ぐ考えだ。

 出身は福山市の親善友好都市・浦項(ポハン)市。妻と小学生の長女、長男と一緒に来日した。市川拓司原作の「いま、会いにゆきます」など日本映画のファン。(鈴中直美)

(2014年4月5日朝刊掲載)

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