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社説・コラム

『晴耕雨読』 島根県知事原発視察の狙いは?

 何度聞いても、納得できる答えは返ってこなかった。事故後、初めて9日に東京電力福島第1原発を視察する溝口善兵衛知事に、その目的を尋ねた4日の記者会見。「先方(東電)が答えられることを聞く」「先方のご都合もあるでしょうから」…。再三の質問にも、主体性が感じられない答弁が続いた。

 なぜ目的を明確にしないのか。県内に立地する中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の稼働問題との関連を問われると「直接は違う」。ここに知事の本音をみた気がした。事故の現実と、いずれ自身が下す稼働への同意・不同意をリンクさせたくない―。より重たい判断になることを避けたのか。そんなふうに思えた。

 だが、福島で放射性物質が拡散したのは事実。事故直後「原因究明が大事」と繰り返したのは、ほかならぬ溝口知事だった。事故から3年余り。その思いは風化してしまったのか。確かに最近、稼働の判断材料の一つとして「事故の原因究明」という言葉を知事から聞かなくなった。今回の視察を原点に立ち戻る契機にしてほしい。

 こと原発問題に関しては、言質を取られまいとする溝口知事。県内には原発稼働への賛否がある。いずれ来る重たい判断のためにも、自身の考えや判断の根拠を分かりやすく県民に説明する姿勢を示してほしい。(樋口浩二)

(2014年4月8日朝刊掲載)

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