×

社説・コラム

憲法 解釈変更を問う 公明党幹事長代行・斉藤鉄夫さん 

9条を形骸化させない

「個別的」拡大で対応を

 集団的自衛権の行使容認の問題は、極めて慎重に議論するべきだ。日本が平和国家として生きていくことをうたう憲法9条を大事にしたい。海外で武力行使はしないというのが、わが国の基本的な在り方。だからこそ戦後日本は、世界で一定の評価を受けてきた。

 なぜ今、海外での武力行使につながりかねない集団的自衛権の行使を認めなければならないのか。国のありよう、われわれの生き方を根本から変える大転換であるのに、国民的議論が深まっているとは思えない。中国、韓国をはじめとしたアジア、そして世界の中で、憲法解釈変更がどのように捉えられるのかも、よく考えないといけない。

 島根県邑南町出身。1993年、旧広島1区で衆院初当選。環境相などを歴任し、2012年の衆院選では比例中国ブロックで7選を果たした。現在は党幹事長代行、党税制調査会長などを務める。

 安倍政権が今、専念すべきは消費税増税による景気の腰折れを防ぐ経済対策であり、デフレ脱却だ。思い切ったアベノミクスの政策で円高は是正され、ようやくデフレ脱却の出口にこぎ着けた。これは安倍政権でなければできなかったことで、評価したい。その他の政策課題は、デフレ脱却後にじっくりと考えればいいと思う。

 「平和の党」を掲げる公明党。集団的自衛権の行使容認問題で、連立相手の自民党との協議が3日、事実上始まったが、行使容認に慎重姿勢を崩さない。

 北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本を取り巻く安全保障環境に変化があることはよく理解している。安倍晋三首相たちが言うように、さまざまな事態を考慮し、対処しなくてはならないのはその通りだ。

 だが、首相が行使容認の必要性を訴える際、米国を狙った弾道ミサイル迎撃の例をよく挙げるが、それは個別的自衛権の拡大などで対応可能ではないか。ほかの事例も一つ一つをよく見ると、わざわざ集団的自衛権の行使を認めなくてもいいと思われるものがある。

 9条を大事にし、9条の精神の中でどう対処するか。そこから研究を始めるべきだ。首相は集団的自衛権の行使容認という自らの信念があって、そこから出発している。われわれはアプローチの仕方が逆だと申し上げている。個別的自衛権の拡大であれば、公明党も柔軟に対応できる部分がある。

 公明党は1999年、自民党との連立政権に参加した。2012年の政権復帰後、安倍政権の「ブレーキ役」を自認する。

 デフレ脱却のため、国民のためにも安定した政権が必要。しかし、われわれは平和の党という旗を降ろすわけにいかない。今回、固い決意を持って臨む。これまで積み上げてきた憲法解釈の重み、日本が生きていく上で9条の果たしてきた役割を自公協議の中で訴え、説得に当たる。

 実は、自民党の中には「公明党頑張れ」という声が結構ある。党内で意見が言いにくいんでしょう。9条を形骸化させない決着の仕方はあり得ると信じ、自民党の志を同じくする人たちと一緒に頑張っていく。(聞き手は城戸収)

(2014年4月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ