×

社説・コラム

社説 特定秘密の監視機関 法の危うさ解消できぬ

 特定秘密保護法が成立して4カ月。もともと法が抱える危なっかしさがここにきて、また一つ浮き彫りになってきた。

 自民党のプロジェクトチームがおととい、国会に設ける監視機関についての当初案を修正することで合意した。これを基に来週から、公明党との与党協議を始めるという。

 だが、小手先の修正であり、国会が果たさなければならないチェック機能を軽視している点で、さほどの違いはない。これで国民の「知る権利」が守られるのか、はなはだ疑わしい。

 そもそも、欠陥だらけの法を成立させたのは国会にほかならない。その国会に不十分な監視機関を設けたところで、法を施行するお墨付きにもなるまい。全ての国会議員はまず、そこを肝に銘じてもらいたい。

 今回、自民の修正の最大のポイントは、当初案にあった「秘密指定の適否を判断しない」のくだりを削ったことだ。もっとも、削除しただけであって「適否を判断する」と明文化したわけではない。

 一方、公明案は「秘密指定の妥当性について政府に改善勧告ができる」などと監視機関の役割をより広く捉えている。さらに「秘密情報は原則として国会に提供する」「メンバーは議席数に応じて会派に割り振る」なども求める。

 両党の開きは大きい。与党協議は難航必至とみられている。

 この監視機関については昨年の特定秘密保護法案の審議の最中に、野党の賛成を取り付けるため与党の側が設置の検討を約束した経緯がある。

 ところが法の成立後、一向に具体化は進まなかった。修正前の自民案を見るまでもなく、やる気はなさそうだと批判されても仕方なかろう。

 とはいえ現段階では、ほかに秘密指定の妥当性を個別にチェックできる第三者機関が想定されていないのも事実だ。唯一民間の有識者でつくる情報保全諮問会議も秘密指定の基準案は検討するが、個別の指定の内容にはタッチしないとされる。

 主権者である国民には特定秘密を知らせないというのが、この法律の勘所にほかならない。すなわち、何を秘密に指定するのか、政府が恣意(しい)的に運用する危険性が常に付きまとう。そこに国会がメスを入れることなしに、一体どう歯止めをかけるというのだろう。

 野党は共産、社民両党が法律そのものの廃止を求める。民主党や日本維新の会などは、特定秘密を含む行政資料の国会提出を原則義務付けることや、不適切な秘密指定であれば国会の側が解除を申し立てる、といった対案を示している。

 いずれの主張も法の不備を裏付けるものだ。今更だが法案審議の段階で、併せて議論すべき筋合いだったといえよう。

 監視機関の設置には国会法の改正が必要となる。よもや与党が多数に乗じ、再び野党の反対を押しのける形で強行突破を図ることはあるまい。

 しかし現在の自民案がベースになれば、国会による監視も看板倒れとなる可能性が極めて高いと言うほかない。各党の踏ん張りが問われよう。

 ただ立法府の責務を真に自覚するなら、ことし12月までの法施行を見送る手だてこそ、まず議論すべきではないか。

(2014年4月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ