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社説・コラム

『記者縦横』 外相会合で市民の声を

■ヒロシマ平和メディアセンター・金崎由美

 昨年の国連総会第1委員会で、「核兵器の非人道性」と不使用を訴える共同声明が幅広い支持を集めた。一転して賛同した日本に加え、なおも背を向けたオーストラリアにも注目が集まった。対抗するかのように、同名の共同声明を提案したからである。

 不可解にも映った行動の意図は、国際非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が入手した豪外交文書に記されていた。

 米国の「核の傘」への依存を揺るがす声明は受け入れがたい。しかし核兵器の非人道性を認識しているというアピールはしたい。独自の声明を打ち出せば「核軍縮に不誠実、という市民社会の非難に反論できる」。

 そんな姿勢が「誠実」なのか首をかしげてしまう。見方を変えれば、核兵器廃絶を目指すNGOや市民が国際社会で影響力を強めている証しといえるだろう。

 一部の非核保有国とNGOが主導する、核兵器の非人道性をめぐる議論。近年になく盛り上がっているが、広島と長崎の被爆者らが何十年と繰り返してきた訴えでもある。核を持つ国や頼る国にも輪が広がり、具体的な廃絶目標につながっていくかが問われる。

 11日、広島市内で軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合が開幕する。米政府高官も被爆地を訪れる。現実の「非人道的な結末」と向き合い市民の生の声を聞く機会となる。「人道」を守るには次に何をすべきか、誠実ならおのずと見えてくるはずだ。

(2014年4月11日朝刊掲載)

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