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社説・コラム

ガテマラー米次官「人間として深い同情」 広島で原爆慰霊碑に献花 CTBT批准に意欲

 軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合にゲスト参加するため広島市を訪れた米国のローズ・ガテマラー国務次官(軍備管理・国際安全保障)が11日、中国新聞の単独インタビューに応じた。市によると、米国の国務次官が平和記念公園で原爆慰霊碑に献花するのは初めて。「大勢が亡くなった場所に立ち、人間として深い同情を覚えた」と話した。(金崎由美)

 ―原爆投下国の政府高官としての被爆地訪問は、困難な決断でしたか。
 そうではなかった。NPDIに招かれるのは光栄なこと。4月下旬に始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会を控えたこの時期、メンバー国としっかり議論したいというのもあった。

 ―米国上院に対し、包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准する重要性を強調する狙いもありますか。
 広島訪問を決めた一つの重要な理由だ。原爆資料館で核兵器の使用がどれだけ人間に被害をもたらすかをこの目で見た。(爆発を伴う核実験を禁止する)CTBTについて米国内の関心を高めたい。

 ―原爆慰霊碑に献花し、被爆者の小倉桂子さんから体験証言を聞きました。何を感じましたか。
 大勢が亡くなった場所に立ち、人間として深い同情を覚えた。第二次世界大戦の犠牲者に対してそうするように、原爆犠牲者に哀悼の意を表したかった。

 8歳の時の壮絶な被爆体験によって、その後の人生を決定づけられた小倉さんの話に聞き入った。私も息子を持つ母親。深く心に刻まれた。

 ―オバマ大統領の広島訪問を願う声が被爆地にあります。任期中の実現は。
 大統領の日程管理はホワイトハウスが行っており、私が言う立場にはない。だが知られているように、オバマ大統領は広島と長崎を訪問するなら「とても光栄だ」と話している。

 ―米国内の保守派への配慮はありませんか。
 それはない。スケジュールの問題と確信している。

 ―帰国後、オバマ大統領に何を報告しますか。
 全般的な報告をする。もちろん、岸田文雄外相と会って貴重な時間を過ごしたことや、印象深かった平和記念公園訪問についても。

 ―市民社会や一部の政府は「核兵器の非人道性」を軸に、核兵器禁止条約の交渉開始を求めるなどしています。米国のスタンスは。
 市民社会は米国の重要な同志だ。だが、わが国が保有核の削減を一歩ずつ進め、冷戦期より大幅に減らしていることについて十分に理解されていないと感じる。もっとも、こちらの説明も足りないし、軍縮努力が十分ではないことは認める。オバマ大統領が「核兵器なき世界」に向けて非常に力を入れ続けていることは分かってほしい。

 ―「核兵器の非人道性」に関する3回目の国際会議が今秋、オーストリアであります。どうしますか。
 核兵器の非人道性というアプローチには大きな関心を持っている。核兵器が使用された場合、人体や経済、環境にどれだけ甚大な被害をもたらすのかを人々に「教育」するのに有用だからだ。だからこそ今回、原爆資料館を訪れたのは価値ある機会だった。国際会議が「教育」のための真の機会になるかどうか、オーストリア政府と話し合ってその点がはっきりすれば参加の検討をするだろう。

(2014年4月12日朝刊掲載)

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