×

ニュース

韓国の金さん、世界巡りアート制作

■記者 伊東雅之

 ニューヨークを中心に活動する韓国のアーティスト金我他(キムアタ)さん(54)が、新たな作品作りの舞台の一つに広島市を選び、制作を始めた。戦争や環境破壊の跡が刻まれた地にキャンバスを置き、自然の営みによって描かれる「絵」で、人間の行いを問う。22日、中区の原爆ドームそばにキャンバスを設置した。

 昨年末に始めた「自然が描く絵画」プロジェクト。2~3メートルほどの白いキャンバスを2年間、屋外に放置。風雨や鳥、虫によって染みや汚れ、においが付くのを待つ。

 これまでに、ニューヨーク、パリ、ソウル、北京、東京などの都市や、チリの砂漠やシベリアの森林地帯など15カ所に設置。エルサレム、アウシュビッツ、ベネチアなど約70カ所も候補地にしている。完成後は全作品を集めて世界各地で展示する予定という。

 「人類初の被爆地ヒロシマは外せない」と当初から考えていた金さんに、原爆ドーム近くの旅館が協力し、実現した。

 この日、旅館の屋上にキャンバスを取り付けた金さんは「ヒロシマの環境が作り上げる作品で、被爆の悲劇を思い起こしてくれれば」と話している。

(2010年7月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ