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被爆死者忘れぬ 己斐小に鎮魂の碑 元国民学校児童らが建立

■記者 藤村潤平

 原爆投下当時に広島市西区の己斐国民学校(現己斐小)に在籍した元児童が24日、校庭に慰霊モニュメントを建立した。65年前、現地で荼毘(だび)に付された2千人もの被爆死者を記憶する「最後の世代」として、鎮魂の証しを残した。

 被爆した広島の上空に、緑青の折り鶴が浮かぶデザイン。廃虚の街は、市が提供した旧市庁舎の御影石、被爆瓦、溶けたガラス瓶などで表現した。建物疎開に動員され、被爆後に逃れてきた己斐国民学校で生徒約20人が亡くなった市立中(現基町高)の制服の陶製ボタンも組み込んだ。

 碑文には、市出身の映画監督新藤兼人さんが書いた「祈り」の文字を刻む。背後に立つ高さ約2.4メートルのステンレス製タイムカプセルの内部には、元児童の回想録や関係資料を納めた。建設費は、元児童の呼び掛けに応じ、422人が寄付した321万円と、市の補助金100万円の計421万円。市立大の若山裕昭芸術学部長(61)が設計した。

 ボタンを寄贈した旧市立中OBの石田晟さん(78)=廿日市市=は「遺族の形見として、動員現場だった中区小網町の慰霊碑内部に保管していた。ゆかりの己斐小でも級友を弔ってもらえるのはありがたい」と感謝する。

 己斐小の校庭からは被爆4年後、遺骨2千体が掘り出された。世話人の一人、被爆当時6年の柚崎博さん(76)=西区=は「遺体を焼くための溝が無数に掘られ、変わり果てた校庭を覚えているのは私たちが最後。この地で亡くなった方を悼む気持ちを永遠に受け継いでほしい」と願う。

 31日午前10時から、除幕式がある。

(2010年7月25日朝刊掲載)

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