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社説・コラム

トップに聞く 核廃絶 NPT準備委でどう訴えますか 広島市・松井一実市長

被害示し 非人道性問う

禁止条約の実現迫る

 核兵器を持たない12カ国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」が11、12の両日、広島市で外相会合を開き、核兵器の非人道性に触れて廃絶への決意を示した「広島宣言」を採択した。28日には米ニューヨークで核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会が始まる。出席を控えた松井一実市長(61)に、NPDIを踏まえて各国の政府代表に何を訴えるのか聞いた。(田中美千子)

 ―被爆地でのNPDI外相会合の評価は。
 出席した外相と直接話し、どなたも原爆被害の実態に心を動かされたと実感した。12カ国は安全保障上の環境も、支持する廃絶のアプローチも異なる。それでも被爆地に集い「核兵器のない世界」を目指すとの確固たる政治的信念を共有した意義は大きい。

 ―「広島宣言」は核兵器禁止条約に言及しませんでした。どう受け止めますか。
 ネガティブな捉え方で被爆地開催の意義を減殺したくない。むしろ、成果を次のステップに生かすべきだ。条約には核兵器保有国を巻き込むのが大命題。「NPDIは違いを乗り越え、究極的なゴールを共有した。だから保有国も議論から逃げないでほしい」。そう迫り、前向きな対応を引き出したい。準備委をその機会にする。

 ―29日に準備委の非政府組織(NGO)セッションで演説します。どんなメッセージを発しますか。
 大きく3点を強調したい。まずは被害の実態だ。広島原爆が人の致死量の何十倍の放射線を放出したのか、何人が命を奪われたのかなど科学的なデータを紹介し、こんな非人道的な兵器が本当に必要ですか、と迫りたい。

 2点目に、核兵器禁止条約の一刻も早い実現を訴える。被爆者の長年の願いとして、核兵器の非人道性に焦点を当て、核軍縮を推し進める国家レベルの議論をさらに盛り上げるよう求めたい。3点目は世代、国境を超えた市民やNGOとの連携の促進だ。

 ―準備委には広島や福山市の高校生たちも初めて同行しますね。
 被爆者が高齢化し、実態を語れる人は加速度的に減っている。廃絶を訴え続けられるよう、国際会議を次世代を育てる場にもしたい。一方、被爆70年の来年に、未来の為政者候補の平和学習をコーディネートする国連組織を誘致できないかとも考えている。ヒロシマは「原爆は絶対悪」と訴え続けねばならない。

核拡散防止条約(NPT)
 1970年に発効、95年に無期限延長した。米国、ロシア、英国、フランス、中国に核兵器保有を認める代わりに核軍縮の義務を課す。非保有国には原子力の「平和利用」を認める。約190カ国が加盟。事実上の核保有国のインド、イスラエル、パキスタンは未加盟。北朝鮮は2003年に脱退宣言した。運用状況を点検する5年ごとの再検討会議を次回は2015年に米ニューヨークの国連本部で開催。事前に開く3回目の準備委員会が今月28日~5月9日に国連本部である。

(2014年4月22日朝刊掲載)

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