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風はここから 再生エネ 自給へ一歩 身近な自然から「使う分だけ」

 木材や太陽光を使った再生可能エネルギーづくりに、中国地方で市民が乗り出そうとしている。売電目的でなく、自分たちが使う分を賄うのが特徴。専門家は、福島第1原発事故や原油高、環境意識の高まりを背景に「エネルギー源を自ら確保する方法を探りつつある」とみている。

 電力買い取り制度を使い、自治体や企業が大規模太陽光発電(メガソーラー)や小水力発電に参入する中、市民団体や地域の取り組みがもう一つの潮流となるか注目される。

 高まりを見せているのは、中国山地や里山の木材をまきや木質ペレットとして使う動き。広島県北広島町の「芸北せどやま再生会議」は、森林所有者から間伐材を地域通貨で買い取り、まきにしてまきストーブ利用者に売る。

 鳥取市のNPO法人「賀露おやじの会」も鳥取県智頭町で木材を購入し、まきにして販売。東広島市の環境保護団体「西条・山と水の環境機構」は共有林の手入れで伐採したスギやカシを木質ペレットにし、メンバーが調理などを楽しむ。

 広島発の試みは、木の枝をそのまま燃料にできる暖房、調理器具づくり。府中市の市民団体「日本ロケットストーブ普及協会」はドラム缶を材料にしたロケットストーブ、庄原市の市民団体「逆手塾」は小型のオイル缶を使ったエコストーブを提案。全国で製作法などの講習会を開いており、愛用者が増えている。「逆手塾」の和田芳治会長(70)は「利便性だけでなく、一手間を掛けて生活を豊かにする楽しさに多くの人が気付き始めている」とする。

 山口県上関町の一般社団法人「祝島千年の島づくり基金」は、太陽光パネルをメンバーの漁業者の船に設置し、エンジンのバッテリー源にしている。江津市の有福温泉町連合自治会などは、温泉発電の実用化へ向けて検討を進めている。

 広島大総合科学研究科の佐藤高晴准教授(再生エネルギー普及論)は「地球温暖化が進む中、原発事故が起こり、原油価格の高止まりも踏まえて、市民がより安全で持続可能なエネルギーの確保に動きだしているのでは」と指摘。災害時などに有益だとした上で「市民の参画意識をさらに高める行政の工夫が必要だ」と求めている。(野崎建一郎、和多正憲)

(2014年4月22日朝刊掲載)

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