原発事故用ヨウ素剤、島根県が運用検討委設置 備蓄するも服用法など未定で 住民「対応遅過ぎる」
14年4月17日
原発事故に備え 島根県保管
中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)が立地する島根県で、事故の際に甲状腺被曝(ひばく)を防ぐ医薬品「安定ヨウ素剤」の配布や服用方法がいまだに定まらず、原発30キロ圏4市の市庁舎などに保管されたままになっている。国が運用方法を明確に示していないためで、県は15日、独自の検討組織を発足した。ただ、住民からは「対応が遅過ぎる」との不満が上がっている。(樋口浩二)
松江市本庁舎の一室。ヨウ素剤の錠剤約24万錠が段ボールに眠る。「事故が起これば職員が住民に届ける」と同市の担当者。だが、原発5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)では国が住民一人一人への事前配布を求めており、市の対応がまだ追い付いていないのが現状だ。
県やPAZがある同市が事前配布に乗り出せないのは、配布後の保管と服用時の細かな手順を国が示していないことが一因だ。国は昨年7月に示したガイドラインでようやく事前配布を決めた段階で、「自治体任せの内容だ」(県幹部)。
県はこの日、同市のほか原発30キロ圏の出雲、雲南、安来市の担当者や専門医師、住民代表計16人で検討委員会を結成。9月にも計76万9千錠の備蓄や配布、服用方法の詳細を決めるとした。ただ、ヨウ素剤は副作用もあるため、出席者からは「服用のルールが決まっておらず心配」など、不安の声も出た。
一方、原発5キロ圏以遠に米子、境港市が含まれる鳥取県は4月中に、県庁や両市の一時避難所などへ68万5千錠を配備する。個人への事前配布がないため、島根県よりも対応が進む。
島根原発から約2キロの古浦自治会の亀城幸平会長(64)は「行政にスピード感がない。ヨウ素剤が事前配布されないと原発再稼働に納得しない住民もいる」と話している。
安定ヨウ素剤
体内にあらかじめヨウ素を含ませることで、放射性ヨウ素の吸入を防ぐ。吸入1時間前の服用で約9割被曝(ひばく)を抑えるとされる。甲状腺機能低下などの副作用もまれにあり医師の処方が原則だが、緊急時は自治体職員と薬剤師も配布できる。
(2014年4月16日朝刊掲載)