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社説・コラム

天風録 「青信号と原子力協定」

 自動車教習所でおなじみのクイズがある。次の文章は正しいかどうか。「信号の赤は止まれ、青は進めを意味する」。うっかり丸をつけてしまいそうになるが、青は命令ではない。「進むことができる」にすぎない▲語尾の「…ことができる」というのがくせ者である。遠回しなゴーサインのようで、違うようで。トルコに原発を売り込むための原子力協定にも出てくる。日本が同意すれば核物質を「濃縮し、又(また)は再処理することができる」という第8条のくだり▲これまで、ベトナムやアラブ首長国連邦との協定では「濃縮又は再処理されない」としてきた。赤信号である。さもあろう。核兵器への道を開きかねない。それがなぜ、今回は青信号に▲わが国と並ぶ地震国でもある。協定の撤回を願い、審議中の参院議員に現地の反対派から届くメールには「言論や集会の自由がトルコにはない」とも。東京との五輪招致レースの最中にイスタンブールで渦巻いたデモの矛先も、「独裁」政治だった▲「日本は再処理に同意しないから大丈夫」と外務省は言いたいらしい。互いにその気がないなら条文は要らない。信号の色以上に、原発貿易のブレーキのありかが気になる。

(2014年4月16日朝刊掲載)

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