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シベリア抑留 苦悩詠む 福山の掛谷さん歌集

 福山市伊勢丘の掛谷敏男さん(86)が歌集「妣(はは)の思い出」を自費出版した。14歳で満州開拓青年義勇隊に入り、終戦後、旧ソ連のシベリアに2年間抑留された体験を中心に詠んでいる。

 138首を収める。「シベリヤに過酷労役ひもじかり離るる船よりしばし振り向きぬ」。収容所で亡くなった仲間の父親の訃報に「柵潜り狙撃に斃(たお)れし戦友(とも)の最後告げざる侭(まま)に尊父逝きたり」と歌った。

 「伸びる程銭が貯(た)まればと妣言ひし爪切るたびに思ふ遠き日」と貧しい農家の三男だった幼少期を振り返り、「六十年連れ添う妻の味に慣れ甘味塩味略(ほぼ)同じなる」と平和な暮らしをかみしめる。

 初の歌集「シベリヤの月冴(さ)ゆ」を出した2009年から13年にかけて作った歌約1500首の中から選んだ。

 掛谷さんは25年ほど前に歌を始め、中国新聞福山版の文芸コーナーへの投稿を続ける。「戦争は二度とごめん、との思いを込めた」と話す。B6判、78ページ。350冊刷り、知人に配った。近く市中央図書館などで貸し出しが始まる。(杉本喜信)

(2014年4月24日朝刊掲載)

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