社説 日米首脳会談 同盟の強化うたったが
14年4月25日
東アジアの平和と安定につながるだろうか。安倍晋三首相はきのう、来日中のオバマ米大統領との首脳会談に臨み、日米同盟の強化をうたった。
中国が領有権を主張する沖縄県の尖閣諸島についてオバマ氏がどう語るのか。それが焦点だったが、会談後の記者会見で「尖閣諸島は日本の施政権下にあり、日米安全保障条約第5条の適用対象」と明言した。
安倍政権としては、中国をけん制する狙いは達したとの受け止めがあろう。早速、中国は反発する姿勢を見せている。
だが日本政府は大統領の発言を盾にするのではなく、自らの外交努力で粘り強く中国との関係改善を目指すべきだ。
尖閣が日米安保の適用対象となるとの見解は、これまでも米国務長官、国防長官らが示してきた。ただし大統領自ら言及したのは初めてのことだ。
その意義について会見で聞かれたオバマ氏は、従来と同じ政府の見解を述べただけとそっけなかった。むしろ目立ったのは、できるだけ中国を刺激しないように配慮する発言を繰り返したことである。
オバマ氏は「米国は中国とも非常に緊密な関係を保っている」とし、中国は世界にとって重要な国と持ち上げた。
それでも日本政府の求めに応じ、大統領が尖閣問題に言及したのは、ロシアと欧米の対立が続くウクライナ情勢が影響したとされる。米国は日本への防衛義務をはっきり示さなければ、欧州の同盟国が疑心暗鬼になると考えたのかもしれない。
こうした背景を踏まえれば、米国が手放しで日本の言い分を受け入れたとは言い難い。
首脳会談では、4回目の核実験を準備しているとされる北朝鮮の問題も取り上げられた。安倍首相は会見で、日本人の拉致問題についてオバマ氏に理解と協力を要請し、支持を得たと述べた。
両首脳は問題解決には日米韓3カ国の連携が重要だと確認したという。当然の認識だろう。
とすれば、日本にとって喫緊の課題は韓国との関係修復ではないか。安倍首相は先月、オランダ・ハーグで日米韓の首脳会談に臨んだ。オバマ氏の仲介で、ようやく朴(パク)槿恵(クネ)大統領との会談が実現したばかりだ。
従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について、安倍首相は「見直しは考えていない」と明言している。朴大統領との2カ国会談に向け、努力を続けてもらいたい。
そもそも韓国にとどまらず、米国との関係も悪化したのは、安倍首相が昨年末、靖国神社に参拝したのがきっかけだった。
きのうの会談後の会見で、首相は自らの参拝について「国のために戦った方々の冥福を祈り、不戦の誓いをした」とあらためて理解を求めた。だが隣にいたオバマ氏は何も語らなかった。とりわけ歴史認識に関わる問題については、首相の慎重な対応が求められよう。
安倍首相は集団的自衛権の行使容認を検討している状況も説明した。オバマ氏は支持する意向を示したという。
だが米国も日本の安全保障政策が近隣の国々を刺激するのは望まないだろう。かえって東アジアの緊張を高めたのでは、本末転倒になりかねない。
(2014年4月25日朝刊掲載)
中国が領有権を主張する沖縄県の尖閣諸島についてオバマ氏がどう語るのか。それが焦点だったが、会談後の記者会見で「尖閣諸島は日本の施政権下にあり、日米安全保障条約第5条の適用対象」と明言した。
安倍政権としては、中国をけん制する狙いは達したとの受け止めがあろう。早速、中国は反発する姿勢を見せている。
だが日本政府は大統領の発言を盾にするのではなく、自らの外交努力で粘り強く中国との関係改善を目指すべきだ。
尖閣が日米安保の適用対象となるとの見解は、これまでも米国務長官、国防長官らが示してきた。ただし大統領自ら言及したのは初めてのことだ。
その意義について会見で聞かれたオバマ氏は、従来と同じ政府の見解を述べただけとそっけなかった。むしろ目立ったのは、できるだけ中国を刺激しないように配慮する発言を繰り返したことである。
オバマ氏は「米国は中国とも非常に緊密な関係を保っている」とし、中国は世界にとって重要な国と持ち上げた。
それでも日本政府の求めに応じ、大統領が尖閣問題に言及したのは、ロシアと欧米の対立が続くウクライナ情勢が影響したとされる。米国は日本への防衛義務をはっきり示さなければ、欧州の同盟国が疑心暗鬼になると考えたのかもしれない。
こうした背景を踏まえれば、米国が手放しで日本の言い分を受け入れたとは言い難い。
首脳会談では、4回目の核実験を準備しているとされる北朝鮮の問題も取り上げられた。安倍首相は会見で、日本人の拉致問題についてオバマ氏に理解と協力を要請し、支持を得たと述べた。
両首脳は問題解決には日米韓3カ国の連携が重要だと確認したという。当然の認識だろう。
とすれば、日本にとって喫緊の課題は韓国との関係修復ではないか。安倍首相は先月、オランダ・ハーグで日米韓の首脳会談に臨んだ。オバマ氏の仲介で、ようやく朴(パク)槿恵(クネ)大統領との会談が実現したばかりだ。
従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について、安倍首相は「見直しは考えていない」と明言している。朴大統領との2カ国会談に向け、努力を続けてもらいたい。
そもそも韓国にとどまらず、米国との関係も悪化したのは、安倍首相が昨年末、靖国神社に参拝したのがきっかけだった。
きのうの会談後の会見で、首相は自らの参拝について「国のために戦った方々の冥福を祈り、不戦の誓いをした」とあらためて理解を求めた。だが隣にいたオバマ氏は何も語らなかった。とりわけ歴史認識に関わる問題については、首相の慎重な対応が求められよう。
安倍首相は集団的自衛権の行使容認を検討している状況も説明した。オバマ氏は支持する意向を示したという。
だが米国も日本の安全保障政策が近隣の国々を刺激するのは望まないだろう。かえって東アジアの緊張を高めたのでは、本末転倒になりかねない。
(2014年4月25日朝刊掲載)