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原発稼働ゼロでも「黒字に」 2年連続赤字 中電、15年3月期へ強調

 2年連続の最終赤字となる2014年3月期決算を発表した中国電力。15年3月期の利益予想は「未定」としたものの、苅田知英社長は広島市中区の本社で開いた会見で「さらなる経営効率化で黒字化を目指す」と述べ、原発の稼働なしで3年ぶりの黒字化を目指す方針を強調した。(山本洋子)

さらなる効率化進める

 14年3月期は、島根原発(松江市)の停止で年1400億円程度の費用が増えた試算。原発の代替とする火力発電の燃料費は円安の影響もあり、初めて6千億円に達した。苅田社長は「燃料費の増加は石油ショック以来の状況で、吸収は極めて困難。非常に厳しい決算だ」と総括した。

 ただ650億円の経営効率化などを進めた結果、本業のもうけを示す営業利益は2年ぶりに黒字化した。

 原発の稼働が見込めず、15年3月期の利益予想と配当予想はいずれも「未定」とした。苅田社長は、他社からの供給も含めて火力発電の稼働が順調なら「さらなる効率化で黒字達成を目指せる」と明言。「過去最大規模」(苅田社長)の670億円の効率化を進め、「原発稼働ゼロ」での最終黒字化を目指す方針を示した。

 JFEスチール(東京)などと共同で、首都圏に火力発電所を建設する計画については「具体的な内容は控えたい」と明言を避けた。ただ、東京電力が14年度に実施する火力発電の建設・運営企業の入札について「検討はしている」と前向きな姿勢を示した。

 電気料金の基準を引き上げる本格改定については「現時点で準備もしていない。現行の料金水準を維持したい」と述べた。

<2014年3月期決算>

企業名   中国電力
売上高   1,256,054( 4.7)
純利益      ※9,384(   -)
配当(円)      50.0(50.0)
株主総会        26日

(単位百万円、かっこ内は前期比増減率%、配当のかっこ内は前期実績、※は損失、株主総会は6月)

【解説】経営基盤強化が必要

 島根原発の停止が長引く中、中国電力は当面「原発稼働ゼロ」でも損益を黒字化させるシナリオを描く。政府が電力小売りの自由化を目指す中、電気料金の値上げを回避して顧客をつなぎ留め、将来に向けて経営体力を備える必要があるためだ。

 政府は2016年をめどとする電力小売りの全面自由化に加え、最終的には大手電力に発電と送配電部門の分離を義務付ける電力システム改革を目指している。JFEスチール(東京)などと共同で東京湾周辺に火力発電所を建設するなどして、首都圏への進出を検討するのも、本格競争の時代に備える動きだ。

 「システム改革で競争が激しくなるが、中国地方の電力事業は成熟期にある。新しい収益源を検討する必要がある」。供給エリア外に出る可能性について苅田知英社長はこう述べた。原発への依存度が低く、全国の電力会社でも停止の影響が比較的少ない中電は、新たな経営戦略に向けて動きやすい立場にある。

 苅田社長は、収支の抜本的な回復には原発の再稼働が必要との考えは変えていない。ただ当面、原発稼働ゼロでも成り立つ経営基盤を築く必要性は高まっている。(山本洋子)

(2014年4月29日朝刊掲載)

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