×

ニュース

判断時期など受け止め割れる 集団的自衛権で中国地方選出議員アンケート

 集団的自衛権の行使容認問題が近く、大きなヤマ場を迎える。安倍晋三首相が設置した有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書が5月の大型連休明けにも提出される見通しとなっているからだ。中国地方選出の国会議員を対象にしたアンケート結果では、限定的な容認を支持する意見が多数だったものの、容認するかどうかを判断する時期や、韓国など近隣諸国の理解を得る必要性については受け止めが分かれた。(城戸収、坂田茂、藤村潤平)

行使容認

安保環境の変化挙げる声目立つ

 集団的自衛権の行使容認に賛同したのは79%を占めた。中国の軍事力増強や北朝鮮のミサイル・核開発を挙げて「喫緊の要事」としたのは自民党の河村建夫氏(山口3区)。安全保障環境の変化を挙げる意見が目立った。容認に慎重な公明党の桝屋敬悟氏(比例中国)は「(行使を禁じる)現時点の政府の立場を支持している」と反対した。

 賛成した19人に容認する際の方法を問うと、63%は「当面は憲法解釈の変更でいい」とした。日本維新の会の平沼赳夫氏(岡山3区)は「緊急を要するため」と説明。「憲法改正が必ず必要」と唯一答えた民主党の津村啓介氏(比例中国)は「憲法9条に自衛権を明記した第3項を追加すべきだ」と主張した。

 「解釈の変更だけでいい」とした自民党の加藤勝信氏(岡山5区)は、党執行部と同じく、砂川事件をめぐる最高裁判決を解釈変更の根拠に挙げた。

 行使できる範囲については89%が「限定的」とした。自民党の寺田稔氏(広島5区)は「他国の戦争に無用に巻き込まれる恐れがある」と警戒する。「独立国家として当然の権利」と全面容認を主張したのは同党の江島潔氏(参院山口)だけだった。

 容認の是非を判断する時期は意見が分散した。安保法制懇の報告書提出をにらみ、「今通常国会中」とするのは29%。自民党の赤沢亮正氏(鳥取2区)は「政府は早期に成案にするべきだ」とした。「年内」は33%だった。一方、「期限を設けず慎重に議論するべきだ」は21%で、公明党の斉藤鉄夫氏(比例中国)は「憲法9条の根幹に関わる内容だ」と強調した。

国民理解

58%「得られる」 閣議決定手法に異論も

 集団的自衛権の行使容認を禁じる憲法解釈を閣議決定で変えることを目指す安倍首相。この手法に「国民の理解は得られる」と考えているのは58%を占めた。

 自民党の河井克行氏(広島3区)は「憲法解釈はこれまで国会答弁などで説明されてきた。閣議決定することで責任が明確になる」と歓迎する。

 一方、「理解を得られない」としたのは25%。民主党の江田五月氏(参院岡山)は「実質的な憲法改正だ」。無所属の亀井静香氏(広島6区)も「一内閣が軽々に判断する問題ではない」と批判する。

 「どちらとも言えない」が17%。日本維新の会の中丸啓氏(比例中国)は「国会でしっかり議論しなければ国民に誤解を生む可能性がある」と指摘した。

近隣諸国の理解

必要・不必要 回答が拮抗

 集団的自衛権の行使を認める場合、近隣諸国の理解を得る必要があるかどうかは判断が分かれた。「必要だ」としたのは38%、「必要ではない」は42%と拮抗(きっこう)した。

 必要との立場の日本維新の会の坂元大輔氏(比例中国)は「北東アジアの日本の影響力を考えれば、理解が必要なのは当然だ」と強調。日本の軍事大国化を懸念する中韓両国への配慮を求める声もあった。

 必要ではないとの見解は自民党に目立ち、「自国の防衛という国内問題」を理由に挙げた。ただ、多くは同時に「趣旨や目的を丁寧に説明すべきだ」=中川俊直氏(自民党・広島4区)=と主張し、政府が説明責任を負うとの認識を示した。「どちらとも言えない」と無回答は計21%だった。

月内にも報告書 解釈改憲目指す

安倍政権

 安倍晋三首相は2012年12月の第2次政権発足後、憲法改正への意欲をたびたび表明してきた。改正の発議要件を緩和する96条改正を打ち出したが、世論の反発を受けてトーンダウン。その代わりに集団的自衛権の行使容認に向けた解釈変更を目指す。

 集団的自衛権は、密接な関係にある国が攻撃された場合、自国への攻撃とみなして実力で阻止する権利。国連憲章51条は、自国への侵害を排除する個別的自衛権とともに主権国の「固有の権利」と規定する。

 しかし、日本政府は「国際法上、集団的自衛権を有している」としながら、憲法9条の下での行使は「国を防衛するための必要最小限度の範囲を超える」と解釈し、禁じてきた。

 安倍首相は中国や北朝鮮を念頭に「安全保障環境の厳しさ」を繰り返し強調。行使を容認し、日米同盟強化と米軍と自衛隊の一体化推進を図ろうとしている。

 集団的自衛権をめぐっては、安倍首相は、検討するための私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を第1次政権時代に設置。第2次政権発足後の13年2月に議論を再開した。安倍首相は5月にも安保法制懇から報告書を受け取り、それを基に集団的自衛権の行使を認める政府見解をまとめる意向。与党内協議を経て、解釈変更の閣議決定を目指す構えだ。

主な質問項目

問1 集団的自衛権の行使を容認するべきですか。

①容認するべきだ
②容認するべきではない
③どちらでもない

問1a 問1で「①容認するべきだ」を選んだ方にうかがいます。容認する際の方法についてどう考えますか。

①憲法改正が必ず必要だ
②憲法改正が望ましいが、当面は憲法解釈を変更して容認するべきだ
③憲法解釈の変更だけでいい④その他

問1b 問1で「①容認するべきだ」を選んだ方にうかがいます。集団的自衛権を行使できる範囲についてどう考えますか。

①全面的に容認するべきだ
②限定的に容認するべきだ
③どちらでもない

問2 集団的自衛権の行使容認問題で、是非の判断時期はいつが良いと思いますか。

①今通常国会中
②年内
③期限を設けず慎重に議論するべきだ④いずれでもない

問3 閣議決定による憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めることは、国民の理解が得られると思いますか。

①思う
②思わない
③どちらとも言えない

問4 集団的自衛権の行使を認める場合、近隣諸国の理解が必要だと考えますか。

①必要だ
②必要ではない
③どちらとも言えない

(2014年5月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ