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ヒロシマアピール採択 2020核廃絶広島会議閉幕

■記者 金崎由美

 2020核廃絶広島会議(主催・平和市長会議、広島市)は29日、核兵器禁止条約の交渉開始のための特別核軍縮会議を11年に開催することなどを求めた「ヒロシマアピール」を採択し、2日間の日程を終えた。

 日本を含む16カ国の行政や非政府組織(NGO)関係者ら計約300人が議論。アピールには10項目の「決意」を盛り込んだ。

 5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成果を踏まえ、2020年までの核兵器廃絶を実現するため、禁止条約の即時交渉開始を要求。被爆国日本政府には「先進的・積極的に行動すること」を求めた。広島・長崎で核保有国首脳やNGOを集めた会議の開催も、その例に挙げる。

 また「核の傘に隠れている全政府に対し、安全保障の理念から核兵器を排除、拒絶すること」など、非核保有国にも軍縮への行動をとるよう訴えている。

 広島国際会議場(中区)であった閉会式で、秋葉忠利市長は「各国政府のリーダーシップに影響を与えるだろう。アピールを世界に広め緊急に行動を開始しよう」と強調した。

 それに先立つ総括審議では、平和市長会議のジャッキー・カバッソ北米コーディネーターが「安全保障を、軍事的な側面ではなく人道上の要請から考えるべきだ」などと強調した。


<解説>禁止条約交渉へ結束

   29日に閉幕した2020核廃絶広島会議は、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で「核兵器禁止条約への言及」という成果を得た市民らが、「交渉開始」という次のステップに向けて結束する機会となった。

 採択したヒロシマアピールは、平和市長会議が訴える2020年までの核兵器廃絶の目標を支持。禁止条約を実現の前提条件と明確に位置付けた。

 そのためには条約の即時交渉の開始が緊急課題となる。それを議論する特別核軍縮会議を11年に開催するようアピールが求めたのは、5年後の次回再検討会議に向けた準備会合が12年に始まるのをにらんだためだ。次の再検討会議で禁止条約に関して一定の前進ができなければ、目標達成が厳しくなるのは明らかだからだ。

 今回の会議には、5月の再検討会議で政府代表たちに影響を与えた非政府組織(NGO)や国連関係者らも出席した。一方、加盟都市が4千を突破した平和市長会議からの出席は国内65都市、海外4都市にとどまった。主催側の参加規模としては物足りなさが否めなかったのも事実だ。

 国内外からの参加者が、被爆者の証言に耳を傾け、核兵器の非人道性を直視した議論を展開したヒロシマならではの会議でもあった。来年の特別核軍縮会議開催を実現させるためにも、今回の成果をより広める方策が急務だ。


ヒロシマアピール(骨子) 

 ①20年までの核兵器廃絶実現へ、核兵器禁止条約締結に向けた交渉開始を求める。11年に特
   別核軍縮会議を開催すべきだ
 ②全政府に、核兵器の開発、実験、使用などの中止を求める。包括的核実験禁止条約(CTBT)
   を緊急かつ無条件に発効させるべきだ
 ③核兵器・軍事支出を大幅削減し、予算を市民の利益や環境保全に利用するべきだ
 ④核共有、または核の傘に隠れている政府に対し、安全保障の理念から核兵器を排除、拒絶す
   るよう求める
 ⑤各国政府に、核兵器開発を助けるような核関連輸出を行わないよう要求する
 ⑥被爆国の日本政府に、先進的・積極的な行動を求める。一例として、核保有国首脳らを被爆地
   に招いて核兵器禁止条約に向けた会議を開くことが可能
 ⑦各国政府と国連に、核軍縮教育を広く実施するよう求める
 ⑧各国の都市に、平和市長会議に加盟して核兵器廃絶へ取り組むよう働きかける
 ⑨日本国内で加盟都市を倍増させるよう、平和市長会議を支援。日本政府や国連に核兵器廃絶
   に向けた行動を働きかける
 ⑩平和市長会議、国際NGO、市民団体の連携を強める

(2010年7月30日朝刊掲載)

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