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被爆地 名乗り上げるか 16年サミット 日本で開催 オバマ氏ら訪問 意義

 2016年に日本で開催される予定の主要国(G8)首脳会議(サミット)を誘致する動きが、全国の自治体で出始めている。3月に長野県軽井沢町が表明し、神戸市議会は全会一致で市側に誘致の取り組みを求める決議案を採択。ところが、被爆地の広島、長崎両市では具体的な動きがない。核兵器廃絶に向け、オバマ米大統領ら各国の政治リーダー訪問を呼び掛ける被爆地が名乗りを上げるかが注目される。(藤村潤平)

 外務省によると、開催地は今夏以降に立候補を募り、政府が来春にも最終決定する予定。期間中は数千人の関係者の滞在が見込まれ、宿泊施設の規模や警備のしやすさなどが選定基準になる。日本では00年に沖縄県名護市、08年は北海道洞爺湖町で開催。国際的にも近年、地方都市や静養地で開く傾向が続いている。

軽井沢町は表明

 軽井沢町は3月、藤巻進町長が誘致を正式表明。町企画課は「観光地のイメージが強いが、今後は国際会議都市としてアピールしたい」とする。神戸市議会が採択した決議は、阪神・淡路大震災からの復興に触れた上で「関西全体の経済や文化の活性化につながる」と開催意義を強調する。市企画課は「検討態勢を本格的に整える」と前向きだ。

 一方、広島市は00年のサミットに立候補した。広島県、広島商工会議所とともに協議会を設立したものの、県市の足並みがそろわず、他都市の誘致活動に後れを取った。

 松井一実市長は、各国の要人を被爆地に招く「迎える平和」を提唱する。4月の軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合での広島宣言も、世界の政治指導者に被爆地の訪問を呼び掛けた。これらの流れを受け、外務省内では「広島市も名乗りを上げるのでは」との声が上がる。

 長崎市では、被爆者5団体などが12年、市や長崎県に「核兵器廃絶を訴える絶好の機会」と16年のサミット誘致を求める要望書を提出した。しかし、市平和推進課は「宿泊施設など物理的なハードルが高く、具体的な検討に至っていない」と説明する。

任期中で最後に

 16年のサミットは、「核兵器のない世界」を掲げるオバマ氏の任期(17年1月)中で最後になる見通し。一橋大の秋山信将教授(国際政治学)は「オバマ氏の被爆地訪問は容易ではないが、サミット出席なら自然に招くことができる。とはいえ、誘致する場合は被爆地での開催意義をしっかり練った上で手を挙げるべきだ」と指摘している。

<主要国首脳サミットの近年の開催地>

2008年 北海道洞爺湖町
  09年 ラクイラ     (イタリア)
  10年 ムスコカ     (カナダ)
  11年 ドービル     (フランス)
  12年 キャンプデービッド(米国)
  13年 ロックアーン   (英国)
  14年 ブリュッセル   (ベルギー)
  15年 エルマウ     (ドイツ)
  16年 未定       (日本)

主要国(G8)首脳サミット
 日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアの8カ国で構成。Gは「グループ」の頭文字。第1次石油危機などへの対策を協議するため1975年に始まり、のちにカナダ(76年)、ロシア(98年)が正式に加わった。開催地は各国の持ち回り。ことしはロシアのソチで開かれる予定だったが、同国がウクライナ南部のクリミア編入を強行したためグループから暫定的に排除され、G7サミットとして6月にベルギー・ブリュッセルで開催。2015年はドイツ、16年は日本の順になっている。

(2014年5月3日朝刊掲載)

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