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社説・コラム

天風録 「猫と憲法」

 朝、新聞を読んでいるとやって来る。ニャアと一声上げて、ぴょんと膝に。仕方なく、なでてやれば、気持ちよさそうに目を閉じる。こちらの心が和みかけた頃には、ぷいと、窓辺へ。気まぐれなところも猫の魅力である▲わが家のが一番と思うけれど、よそのもかわいい。動物写真家、岩合光昭さんの作品展が広島駅前の百貨店で開かれている。屋根の上を散歩し、レンゲ畑で大あくび。市場で食べ物をねだり、迷子の仲間はなめてやる▲「猫は平和主義者なんです」。1枚ずつ見ていくうち、岩合さんの持論に共感した。写っているのは、かわいがる人がいて居心地よさそうな土地ばかり。すみかを選ぶらしい。わたしたちの足元を映す鏡かもしれない▲きょう憲法記念日。この国が守ってきた平和主義はどうだろう。このところ、きな臭い方向へ足を踏み出してはいないか気に掛かる。憲法の意味をかみしめる本も書店に多く並んでいる。あらためて読み直してみたい▲「猫が幸せに暮らしている風景は、憲法が目指す世界平和に通じるのでは」と岩合さん。犬や小鳥に置き換えてもいい。平和とは何か。共に生きる動物たちと触れ合って、思い巡らす日にしてみては。

(2014年5月3日朝刊掲載)

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