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社説・コラム

新風びんご 農業・長野寛さん(尾道市瀬戸田町)

福島から移住 果樹栽培

 穏やかな瀬戸内海を望む広島県尾道市因島三庄町。傾斜地の畑でハッサクや温州ミカンの苗木の成長を確かめる。栽培を始めて1年余り。かんきつの木が持つ本来の力を引き出したいと、無農薬無肥料で育てる。「分からないことばかり。もっと経験を積みたい」

 2011年3月の福島第1原発事故の発生直後、原発から約50キロ離れた福島市の自宅から親戚のいる尾道市瀬戸田町に避難した。福島市には、08年に東京から脱サラして移住。自給自足を目指し、米と野菜を育て、冬はスキー場で働いていた。

 瀬戸田町へは一時避難のつもりだった。事故は収束せず、移住先を求めて北海道や四国など全国を回った。「でも因島や瀬戸田ほど気候が穏やかで暮らしやすい場所はなかった」。12年春、定住を決めた。

 因島三庄町の土地約1ヘクタールを購入し、昨年3月、ハッサクや温州ミカン、レモンなど計約120本の苗木を植えた。近くのハッサク畑を借り、収穫した実をインターネットで販売する試みも、軌道に乗りつつある。

 今年は開墾を進め、苗木を約300本まで増やしたいと思っている。夏か秋には、子どもを対象に果樹園でキャンプを開く計画もある。「10年、20年かかるかもしれないが、将来は観光農園を開きたい」と夢を描く。(鈴木大介)

ながの・ひろし
 大阪府高槻市出身。大学卒業後、東京や大阪で17年間サラリーマン生活を送った。福島市で3年暮らした後、東日本大震災を機に尾道市に移住した。果樹園は「うみかぜ草園」と名付けた。妻、長女と3人暮らし。

(2014年5月3日朝刊掲載)

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