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大田洋子しのび文学碑 作品で紹介 前住職が建立 広島

■記者 増田咲子

 自らの被爆体験を基にした「屍(しかばね)の街」で知られる作家大田洋子(1903~63年)をしのび、広島市中区白島九軒町、宝勝院の前住職国分良徳さん(81)が29日、寺の南側にある墓所に文学碑を建立した。同作品に国分さん家族の被爆体験が盛り込まれていたのがきっかけという。

 16歳だった国分さんは寺で被爆。母と妹、弟が下敷きになって死亡した。大田洋子は当時隣の家で被爆しており、「屍の街」には「寺では夫人と赤ん坊と五つの男の子の三人が、下敷になつて死んだという」と、国分さん一家の状況に触れた文章がある。

 国分さんは、自分が大田さんにそのことを話した記憶があるといい、この記述に気付いて建立を思い立った。

 碑は土台を除き縦約90センチ、横約120センチ。「大田洋子被爆の地」と記した下に、小説の一節を刻んだ。文章のうち実際には「七つの女の子」だった点は、訂正している。この日の除幕式では、集まった近所の約30人を前に、国分さんは「原爆のむごさを後世に伝えたい」と話していた。

(2010年7月30日朝刊掲載)

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