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両親失い原爆と向き合う 広島の山田さん

■記者 林淳一郎

 広島市東区の被爆者山田寿美子さん(67)が8月6日、中区である原水爆禁止世界大会(日本原水協など主催)で半生を語る。原爆で両親を失った。親類や姉に支えられて育ち、大学卒業後は医療ソーシャルワーカーとして被爆者を支えてきた。「生き延びた被爆者の戦後を若い人に伝えたい」。推敲(すいこう)を重ねている。

 爆心地から2.3キロの三滝町(現西区)で被爆。中心部で建物疎開をしていた父は遺骨も見つからなかった。母は2週間後に他界。親類の家を転々とした。結婚した姉の暮らす岡山市に落ち着くことになり、進学そして広島市西区の病院に就職することができた。

 スピーチは8分間。半生とともに、その中で目の当たりにした被爆者の生きざまに触れる。原爆で大やけどを負い、自暴自棄になったが被爆証言をきっかけに自らの役割を見つけた男性がいる。一方で証言活動をしてきた被爆者が一人で外出できなくなったり、認知症になって語れなくなったりというケースが目立つようになった。

 山田さんは定年退職後の2006年、自宅に居宅介護支援事業所を開所した。スタッフ計4人で老いゆく被爆者たちの介護相談に乗っている。「家族や生活を奪う原爆や戦争をなくさないといけない。思い出すのはつらいけれど、そのために次世代に語り継ぎたいんです」

(2010年7月30日朝刊掲載)

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