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被爆地の声届いた NPT準備委参加の西田さん感想 後輩ジュニアライターが取材

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会に「ナガサキ・ユース代表団」として参加している元中国新聞ジュニアライターで長崎大2年の西田千紗さん(19)に、現役ジュニアライター7人が3日、インターネットのテレビ電話で現地の様子を聞いた。

 ジュニアライターは「会議を聞いていて、核兵器保有国は本当に減らす気があると感じましたか」「参加国は広島の原爆被害の知識がありますか」などと質問。西田さんは「核兵器の非人道性はどの国も認めているけど、自国のことを考えると核に抑止力がある、と政治的な思惑が絡んで素直な気持ちを言っていない」「広島、長崎を訪れたことのある人がほとんどいなくて、具体的な被害が分かっていない。だから『非人道的』と言っても抽象的になりがち。それより自国を守る方向に流れやすい、と知った」と答えていた。

 また、「非政府組織(NGO)は国家を動かせると思いますか」との問いには「本会議の中で、NGOが意見発表した時、アイルランドの代表が『NGOを支持する。スピーチありがとう』と言っていた。国を動かしていると思った」と紹介。西田さんが、日本政府主催の夕食会で、各国の軍縮担当官たち150人の前で核廃絶や被爆者について話した経験にも触れ、「すごく真剣に聞いてくれた。スピーチの後、ある国の関係者から『そのまま伝え続けていってほしい。NGOの声が大きくなれば国は無視できなくなる』と言われた。ちゃんと届いていると実感できた」と話していた。

 そして、「NGO一つ一つは弱いけど、まとまって声を上げることが大事。広島と長崎も同じような経験をしているから、つながりを強めたい。私も橋渡ししたい」と意欲を見せた。

 ジュニアライターの高校1年山下未来さん(15)は「先輩は世界で頑張っていてすごい。日本も核兵器廃絶について曖昧な態度ではなく、はっきり支持してほしい。他国の人たちには、もっと被爆地のことを知ってほしい」と話していた。

 「ナガサキ・ユース代表団」は、長崎県、長崎市、長崎大でつくる「核兵器廃絶長崎連絡協議会」が昨年から実施。今年は西田さんを含む8人を公募で選び、現地に派遣した。7日まで滞在する。(二井理江)

(2014年5月5日朝刊掲載)  このほか、ジュニアライターと西田さんとの主なやり取りは以下の通り。

Q(ジュニアライター)「本会議の様子を教えてください」
A(西田さん)「4月28日と29日午前にジェネラル・ディベートという、意見を言いたい参加国が発言する、という機会があった。米国の核実験が何度もあって被曝者がたくさんいるマーシャル諸島が、国際司法裁判所に核保有国9カ国に対して核を減らす努力をしていない、と訴えを起こし、核被害を訴えて核をなくすために動いてほしい、という話をしたら、会場が拍手喝采になったのが印象的だった」

Q「NGOの人たちは、核兵器についてどのように捉えているか」
A「NGOレベルでは核の非人道性について意見は一致している。各国の状況やしがらみをNGOの力でどうやって動かしていこうか、という話になっている。国の違いは感じない」

Q「大学で学んでいることで、現地で役に立ったことはあるか」
A「私は医学部で国際保健医療科に所属していて、福島やカザフスタンにも行った。広島、長崎を訪れる機会がなくて、抽象的な理解しかできていない人が多い中、放射線のデータについて少し具体的に伝えることができている」

Q「期待外れだったことはあるか」
A「4月29日の午後、NGOが本会議でプレゼンテーションし、広島市長や長崎市長、被爆者なども意見を述べた。アイルランドのように具体的に動いている国があった一方、欠席している国も多くて、聞く耳を持っていない代表者もいた」

Q「ドイツの大学生との交流について教えてください」
A「ドイツの大学生は、福島第一原子力発電所の事故についてすごく興味を持っていた。どう感じて、どう行動したか、など聞かれてすぐに答えられるよう、議論を深めないといけないと感じた。ドイツでは、東日本大震災での原発事故を機に、原発を止めるという流れが加速した。日本みたいな先端技術を持っている国でさえ原発を管理できないんだから、と。そして、原発はテロに狙われやすい、というのと、使用済み燃料は核兵器の材料になり得る、と止めることになった、と言っていた。その通りだなあ、と納得できた」

Q「ジュニアライターの活動が生きた場面はあるか」
A「ジュニアライターでは取材の前に、会う人について調べたり質問を考えたりしていた。そして初めて会う人にもどんどん質問していた。今回も、知らない人でもアポをとれるし、事前の段取りもできる。ためらわずに質問や意見が言えるのはジュニアライターをしていたおかげだと思う。ただ、今回はいろんな人に会おうとアポを取るのに苦労した。ジュニアライター時代は中国新聞という名前があったから普段会えないような人に会えたんだと思う。しっかり生かして、広島から発信していってほしい」

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<交流に参加したジュニアライターの感想(山下さん除く)>

 元ジュニアライターが世界に飛び出している姿を生で見られて感動しました。平和のことを考え、実際に行動できる…すごくかっこいいです。私もこれからジュニアライターを続け、私なりの平和活動を続けようとあらためて感じました。英語の勉強も頑張ります。(中1・藤井志穂)

 英語の会議内容を理解することができるなんて、すごいです。また、ジュニアライターの経験をニューヨークでも活かすことができていると聞いて、私も西田さんみたいに、今の経験を何かに活かせたらいいなと思いました。(中2・上岡弘実)

 ジュニアライターの先輩である西田さんが、ナガサキ・ユース代表団として活躍していると知り、とても驚きました。私もジュニアライターの貴重な経験をいろいろなところで生かせていければいいなと思いました。(中2・中川碧)

 西田さんは、私たちと話した内容全てを英語で話せるんだって驚きました。私も、西田さんのように英語を駆使出来るようになりたいです。(中3・坪木茉里佳)

 西田先輩はきさくで可愛らしい女子大生でしたが、核を拡散させないという強い思いを語る姿はかっこよく、憧れました。また、ジュニアライターがいかに恵まれているか教えて頂きました。今の環境に感謝して活動します。(高1・二井谷栞)

 久しぶりに話した先輩は、すっかり大人っぽくなっていました。これまでさまざまな経験を積み活躍する西田さん。僕も、後輩ジュニアライターにインタビューされるようになるよう日々努力したいです。(高3・石井大智)

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