『備後語録』 作家・憲法学者 竹田恒泰さん
14年5月8日
作家・憲法学者 竹田恒泰さん(38)=神奈川県三浦市
互助の精神 日本人の誇り
東日本大震災を機に日本人の意識が大きく変わったと強調する。「多くの人が、日本の未来についてどう責任を果たすべきか考えるようになった」。尾道市内であった講演会(尾道ライオンズクラブ主催)で、約千人を前に語りかけた。
震災後、日本人が略奪行為に走らず、規律を持ってお互いを助け合う姿に世界中が感動した。冷静に自分たちの力で立ち上がるこの姿こそ、世界に誇るべき日本人の精神。「外国人の友人からは、イエス・キリストやブッダにもたとえられた行動。友人には衝撃でさえあったようだ」
日本人の精神の高潔さは第2次世界大戦後、シベリアに抑留された日本人捕虜の行動にもあった。旧ソ連だったウズベキスタンの首都タシケント市にある国立ナボイ劇場は、日本人捕虜が建てた。「劣悪な強制労働で死者も多く出た。彼らはそれでも一切手を抜かなかった」とたたえる。
というのも、タシケント市内でその後、大地震が起きて多くの建物が倒壊する中、ただ一つ無傷だったのがこの劇場。現地の人は基礎部分まで完璧に仕上げた日本人に畏敬の念さえ抱いた。「今でもウズベキスタンでは、将来は日本人のような立派な大人になれと教育している」
日本人には、お金を稼ぐ以前に、これを作ったら喜んでもらえると、幸せの連鎖をイメージしながらもの作りをする文化がある。世界に誇れるこの精神を若い世代に継承していかねばならない。「どんな小さな仕事でもいい。この精神に満ちあふれて仕事をする時代が来れば日本はもっと栄えるはずだ」(村上昭徳)
たけだ・つねやす
東京都港区出身。慶応大法学部卒。3月末まで同大大学院法学研究科講師を務めた。専門は憲法学・史学。「語られなかった皇族たちの真実」など著書多数。
(2014年5月6日朝刊掲載)