×

ニュース

波紋 特定秘密保護法 海自の街 呉に戸惑い 「処罰基準 分からぬ」 

客の隊員との会話にも重要情報?

 海上自衛隊の基地を抱える呉市で、特定秘密保護法に対する戸惑いが聞こえてくる。市内や周辺には隊員約5700人が暮らし、防衛関連企業や取引業者、隊員が出入りする店も多い。知らぬ間に秘密に触れ、話し、処罰されないか―。懸念を抱く市民もいる。(小島正和)  「艦船の出入港日も重要情報と思うが何となく分かる。どこまでが秘密なのだろうか」。市内で飲食店を経営する60代男性は困惑する。隊員との会話に特定秘密が潜んでいる可能性もゼロとはいえない。

 法が規定する特定秘密は4分野。その一つの防衛分野の特定秘密として、隊の運用に関する計画▽収集した情報▽武器の種類―など大きく10項目が設定してある。自衛隊法で「別表」に定める事項に相当し、かつ公になっておらず特に秘匿が必要なものが対象だ。

 隊員も通う理髪店の40代の店主は「これでは分からない」と不気味がる。個別具体は防衛相が指定、秘密指定や解除といった運用基準は有識者会議の意見を反映させて今秋をめどに閣議決定する。秘密を漏らした公務員だけでなく、唆すなどして秘密を得たと判断されれば市民も処罰対象だ。

 別の飲食店責任者の40代女性は「客の隊員から情報を聞き出すことも明かされることもないが、そんな話になれば話を変える」と危うきに近づかないという。

 防衛装備の点検を担う市内の会社は、設計図や性能データといった自衛隊法に定める防衛秘密を扱う。管理者以外の入室を制限し、社員の保全教育を定期実施するなど対策は十分とする。担当者は「やるべきことも大筋変わらない。特定秘密が指定された時点で個別対応する」と冷静だ。

 海自関係者は特定秘密保護法の施行について肯定的。技術幹部だった60代の元隊員は「秘密漏えいを厳しく抑制できるのは好ましい」。50代の隊員は「特定秘密に関わる隊員はごく一部。全隊員に厳しい保全対策を徹底している」。

 基地とともに歩んだ町。部隊行動や装備計画のような「秘密」に市民が近い位置にいるとの意識は強い。飲食店を営む60代の男性は「自衛隊あっての呉。秘密を好んで漏らすはずがないが、何が特定秘密に当たるのか分からないのは不安」とし、明確な線引きを望んでいる。

(2014年5月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ