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社説・コラム

天風録 「赤いオオカミの声」

 永田町に太鼓がとどろく。リズムに乗って声も弾む。各地の原発を順に挙げ「再稼働反対」と。首相官邸前で金曜夜のデモが続く。福島の事故の1年後に始まり先週、100回を数えた▲「赤いオオカミ」の姿がその中心にある。主催団体の一員、ミサオ・レッドウルフさん。広島出身の女性イラストレーターという。「大勢で集まって抗議するのが効果的」。7年前から反対運動に取り組む筋金入りだ▲一時は20万人が押し寄せた。回を重ねてきた門前の訴えだが、現政権には、のれんに腕押しか。首相は「簡単にやめたとは言えない」と、エネルギー基本計画に再稼働を明記した。輸出の手前もあり、ゼロにできないのだろう▲脱原発社会へ、元首相2人が再びタッグを組む。東京都知事選では惨敗したけれど果たして。一方、卒原発を掲げる滋賀県知事は退く。まだ道のりは遠そうだ。政権に届けたい声の、道しるべとなる狼火(のろし)は一体どこに▲101回目の集会がきょう夕刻に始まる。一時の熱狂はしぼみ、今では数千人ほど。それでも初めて参加する人が後を絶たないようだ。「こつこつ続ける」。赤いオオカミは民の力を信じる。今夜も皆、声をからすのだろう。

(2014年5月9日朝刊掲載)

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