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憲法 解釈変更を問う 庄原市議・松浦昇さん 

地方の声 伝える意見書

党派超えた行動のとき

 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することは9条を壊し、国の形を変える。大変な事態が起きようとしている今だからこそ、地方議会が機能を発揮し、国政に地方の声を届けなければならない。

 3月、庄原市議会(定数20)の定例会に、憲法解釈の変更に反対する意見書案を提出した。共産党市議団に所属。「立憲主義を根底からこわす暴挙」「立法府軽視は許されない」。文面は自ら考え、閣議決定による解釈変更を目指す安倍晋三首相の姿勢を厳しく批判した。議長を除く採決は賛成17、反対2と、大きな支持を得て可決。安倍首相と衆参両院議長に提出した。

 解釈変更反対の意見書を出そうと思ったのは、「平和憲法」を守りたいとの一念からだ。

 1940年に生まれ、5年間は戦争の時代を過ごした。当時、父親は海軍の輸送艦に乗り、マレーシアなど各地に赴いた。「お父さんは今、戦地で頑張りよるんよ」。母親の声が今も記憶の片隅にある。

 小学校に上がったのは憲法が施行された47年。新しい教科書で「今から戦争はしない、話し合いで物事を解決する」と習った。あれから67年。憲法は日本の平和を築いてきたと強く思う。守って生かさないといけない。その憲法を脇に置き、自分の意に沿うように解釈を変更するなどもっての外だ。

 庄原のような農村地域では、都市部に比べると動きが鈍いように感じる。安倍内閣は国民の動向を見ているはず。いかに世論を盛り上げるかが重要になる。自分にできることとして、地域を宣伝カーで巡回し、集団的自衛権の問題を訴えることも考えている。

 行使容認に反対する意見書は昨年9月以降、全国50以上の市町村議会が衆参両院に相次いで提出した。安倍首相が同年8月、行使に前向きとされる小松一郎氏を内閣法制局長官に起用したことなどが影響したとみられる。しかし中国新聞の調べでは、中国地方での提出は庄原市議会しかない。

 中国地方の他の議会から意見書が提出されないのは残念。その理由はよく分からないが、仮に党派のしがらみなどから、おかしいことをおかしいと言えないでいるのだとすれば、地方議会としての役割から逃げている。

 広島は、米国に原爆を落とされた。あの戦争では300万人以上の国民が犠牲になり、諸外国に大きな被害を与えた。再びそんな戦争ができる国にするのかどうかという切迫した状況の中、党派の違いなどを言っている場合ではない。県内全23市町の議会から意見書が出てもおかしくはないはずだ。

 確かに意見書を提出しても、政府や国会がその意見に従ったり、回答したりする法的な拘束力はない。しかし、広島をはじめ、全国の地方議会が解釈変更に反対する意思を示せば、安倍首相も立ち止まるのではないかと思う。住民の代表機関としての役割を果たすべきだ。(聞き手は松本恭治)

(2014年5月9日朝刊掲載)

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